■マーケティングとはニーズを掘り起こし、ターゲットを明確にすること
―マーケティングの道が長かったそうですね
土倉:そうですね。広告・宣伝などのプロモーションを含めて、新卒からマーケティングの道を歩んできました。
―前職では執行役員までやられていますね
土倉:前職の株式会社ドリコムでは、執行役員・マーケティング本部長をしていました。ただ、最後の方では、マーケティングだけではなくて、ゲームのプロデュース、総務、カスタマーサポート、品質管理、情報システム、組織開発などもしていました。
―執行役員までやられて、独立しようと思ったのはなぜですか
土倉:執行役員まで行けば、これ以上、上はありません。また、マネジメントも多い時は200人以上をみていましたが、そうすると、人に使っている時間がすごく長くなって、マネジメントのスキルは上がっているかもしれませんが、個としての成長が止まっている感じがすごくあったからです。
―土倉さんの会社(株)SALT(ソルト)は、マーケティングのコンサルタント会社ですね
土倉:そうです。マーケティングとはそもそも、サービスやプロダクトを、その価値を求めているターゲットに対して届けて、買ってもらったり使ってもらったりすることです。わかりやすく言えば、お店を開いてもお客さんが来ない、集客どうしようというときに、そのお店のプロダクトやサービスの強みやお客さんにどういう価値を提供したいのかをちゃんと言語化することです。
そして、どういう人がその価値を求めているか、そのニーズを掘り起こして、ターゲットを明確にすれば、おのずと手段は見つかってくるので、「この人に一番、この価値を効率的に届ける仕組みはこれだよね」といった全体像としての戦略を立てるのが仕事です。
また、企業のミッション・ビジョン・バリューの確立も手掛けています。クライアントが中小企業の場合、会社の課題を深堀りしていくと、ミッション・ビジョン・バリューが明確化されていないことが起因だったりします。会社の羅針盤であるミッション・ビジョン・バリューが言語化されていないので、事業がバラバラに動いていて、うまく回転できていない場合が多いのです。
SALT=Sense And Logical Thinking…センスとロジックの両方を大事にする
■社名に込めた3つの思い
―ところでSALTのビジョン・ミッションはなんでしょうか
土倉:価値を求めている人に、その価値を届けることをやりたいのです。なぜかというと、日本ではマーケティングが発達していません。日本は「良いものを作れば売れる」という供給側の論理がいまだに幅を利かせていますが、コロナ禍になって、一時期、営業できなくなり、みんな「モノが売れない」と頭を抱えていたときに、マーケティングの重要性が認識されてきました。
今、自社で飲食店を開いたり、webサービスを創ったりしていますが、自分たちでモノやサービスを創って、自分たちでちゃんとその価値を求めている人に届けることが、実は、本当にSALTでやりたいことなんです。
―社名のSALTには3つの思いが込められているそうですね
土倉:社名は短くすることが大前提でしたので、SALT=塩という社名にしました。さらに僕らはストーリーを大事にしているので、まずは、人間にとって不可欠な塩であること、ひいてはプロダクト・サービスにとって大事なこと=本質をちゃんと捉えますということ、美味しい素材は塩で食べるのが一番なのと同様に、プロダクト・サービスの強みをシンプルに引き出しますという思いを込めています。
そして最後は、ロジックだけでなくセンスも大事で、両方、大事にしますということで、Sense
And Logical Thinkingの頭文字をとったと説明します。これを最初に言うと、信用されたりもしますね。社名もそうですが、プロダクトもサービスもとにかくシンプルに、というのがいいですね。
Facebookコミュニティ「中原おうちごはん」が地域活動の原点
■コロナ禍がきっかけで地域活動を始める
―一方で、Facebookコミュニティ「中原おうちごはん」を立ち上げましたね
土倉:新型コロナがはやり出した時に、よくいく地元の飲食店で「テイクアウトを始めようと思っている」と店長に言われたのですが、ネット上にメニューがないので、電話がかかってくると、店員さんがメニューを口頭で言って、注文を取っていました。そこで、お店側にもお客の側にも需要があるなと思って、Facebook上で、「中原おうちごはん」を立ち上げました。
思った通り、メンバーがすぐに1000人程度になりました。まさに潜在ニーズを掘り当てた形ですね。そのうち、投稿してくれた店をグーグルマップ上でピンを立てていたら、中原区役所とつながって、僕が作っていたテイクアウト・マップをフライヤーにして、駅とか東急ストア、あるいは協力してくれるお店などに配ったのです。
それが、地域活動の原点ですね。それまでは、まったく地域活動をしていませんでした。だから、武蔵小杉に友達なんて一人もいなかったのです。本当にコロナ禍のおかげで地域活動をするようになりました。
新しいコミュニティが次々に生まれる「新城サカバー」
■コミュニティのプラットフォーム「新城サカバー」を手掛ける
―武蔵新城にバー「新城サカバー」を立ち上げたきっかけは
土倉:そもそもは「新城サカバー」が入居しているビルのオーナーである石井秀和さんとのつながりです。今、石井さんの会社(南荘石井事務所)のブランディングをお手伝いしているのですが、この「新城サカバー」が入居している建物のプロモーションのお手伝いをしたときに、なかなか入居する最終的なテナントが決まりませんでした。そこで、「それでは、僕がバーをやります」と手を挙げたんです。
「新城サカバー」を開くにあたり、「自分の代わりを何人か集めれば、面白いことになるのではないか」と思いついたのです。マスター&ママさんが日替わりで交代することで、どんどん新たなつながりとコミュニティが生まれ、お店としても集客に困らずに自走できると考えたわけです。今、マスター&ママ立候補者が60名ほどいて、30名ほどが、実際にお店に立っています。
―地域のプラットフォームという発想だそうですね
土倉:結構、コミュニティの限界も感じていて、同じ価値観で仲間を作るのは楽しいのですが、拡大する点においてはスピード感がなかったりします。そこで「場」をつくってプラットフォームにすることによって、色々なコミュニティがどんどん自己増殖して生まれ、拡大のスピードも速いです。
また、僕は「大人のキッザニア」と呼んでいるのですが、ほぼリスクもなく自分のお店を持てるというところに価値と面白さを感じていただければいいのかなと思っています。
―今後はどう展開していきますか
土倉:これは、地域活動ではないですが、会社としては新たなwebサービスを考えています。自分の「推し」の人から、ステキなことをしてもらえる今までにないサービスです。お楽しみに!
地域活動としては、「新城サカバー」にもまだまだ課題があるので、その課題をどう解決するのかを考えています。さらに、「新城サカバー」の仕組みをなにかしら横展開して、もっと大きくしていきたいとも思っています。
―読者へのメッセージをお願いします
土倉:地域の活動に参加されたことがない方は、勇気を出して参加すると、違う世界が見えてきます。色々な人とつながっていくことは、すごく楽しいですし、様々な刺激をもらえます。
僕がもし、会社の事業で失敗したときにも、何かしら、助けてくれる人がいると思います。それがあるから、新しいチャレンジもできるのです。地域に仲間がいることで人生は豊かになりますよ。
また、集客やコミュニティ運営など、お困りのことがあればお気軽にご相談ください!
株式会社SALTホームページ:https://salt-inc.jp/
現代社会は、地縁、血縁、社縁(職場の縁)が希薄になり、個々人がバラバラに分断され、多くの人が孤立するようになりました。そんな社会を修復するにはどうすればいいか。その一つの解が、新たなコミュニティを創造することだと思っています。