川崎市議会議員・松原成文氏に訊く行政の「役割」

川崎市議会議員・松原成文氏に訊く行政の「役割」

行政と市民のパートナーシップを形成する町内会や自治会は高齢化が進み、若い方々が入ってこないという課題を抱えています。一方で、この10年で行政の市民サービスは向上し、民間の力を活用した循環型社会の実現を目指した取り組みも行われ、能登半島地震では、改めて防災・減災対策の重要性が浮き彫りになりました。


区長にもっと権限を与える制度改革が必要

―区役所機能を強化するにはどのようなことが必要でしょうか

松原:たとえば東京都23区では、区長は公選で選ばれます。ですから、それなりの権限があるし、予算的な執行もできます。区役所機能を強化するには、基本的に制度を変えていく必要があります。

 

今の川崎市の区長は公選で選ばれているわけではなく、市長が任命していますから、予算の配分に関しても裁量が限られています。ゆくゆくは市の権限を区に一部割譲することなどといった制度の見直しや法律の改正をしなければいけませんから、まだまだ5年、10年はかかるのではないかと思います。

 

―この10年間で、区の機能が強化されたのはどういう点でしょうか

松原:市民サービスが向上しました。たとえば、2月から4月にかけて、区役所での住所変更などの出入りが激しいときの待ち時間がたいぶ短縮されてきていますし、待っている方々に、どのくらい待っていただくのかを表示できるようになりました。

 

また、区長さんの想いが、町内会や自治会の関係の方とのやりとりで、以前に比べれば密になってきています。区役所では職員が、高齢者の方や赤ちゃんを連れた方に「どんな御用ですか」と積極的に声をかける姿も見られるようになりました。

―音楽ライブ事業などを通して魅力のある街づくりが実現していますが、より魅力的な街になるには何が必要でしょうか

松原:「音楽の街かわさき」ということで、音楽ライブ事業などはだいぶ盛んになりました。ただ絵画などの芸術分野、たとえば川崎市民ミュージアムでは、竣工された当時と同じような展示物が、10年、20年、展示されていました。

 

年に何回かは企画展をしていましたが、来場者はあまり増えませんでした。市民が何を求めているのかをある程度リサーチして企画展を開く、あるいは展示物を増やす努力が必要だったと思います。

区役所の市民サービスは向上したが課題も多い

地域包括ケアシステムはまだまだ構築途上

―かつて区民会議などがありましたが、行政と市民がパートナーシップを形成するには課題がありますか

松原:福田市長は区民会議をもっとバージョンアップしたものを構築しようとしています。ある町内会では、花を植える運動が盛り上がったり、あるいは子どもたちの交通安全とか、成果が出ている部分もあると思います。清掃活動なども区民の皆さんが取り組むようになりました。

 

しかし、パートナーの町内会、自治会の組織率が右肩上がりかというと、その逆です。やはり若い方々が入ってくることがなかなか難しい町内会、自治会の活動をどうするかという課題があります。

―お年寄りや障がい者に基準を合わせたみんなに快適な社会への構築は進んでいますか

松原:これは地域包括ケアシステムという、地域で生涯、快適に過ごせるための取り組みです。私は昨年母を亡くしましたが、晩年の23年介護をしました。その際に、色々と行政にお願い事をしても、すぐには対応できない場面があり、現実的にはなかなか進んでいないのが現状です。

―地域包括ケアシステムというのは、まだまだ構築の途上にあるということですか

松原:私の場合は、自分の母親で体験しましたから、そういう実感はあります。「すぐに入院できますか」と尋ねても入院できないし、逆に「ご自宅で介護していただけますか」と言われても、私も妻も働いているので、困ってしまいます。そういう体験を自分自身でしてきたので、もっと苦労されている方が大勢いらっしゃるのかなと思います。

民間の力をうまく活用して循環型社会を実現

―シングルマザーが困窮しているケースが多くみられます

松原:どういうことで大変な思いをしているかという意見を直接聞かないと、問題があぶり出されてこないと思っています。保育園に入れない、もっと長時間子供を預かっていてほしい、給与が低すぎるなど様々な問題が個別にあると思います。

 

実際にそれらの課題を明確にして取り組まないと解決はできないと思っています。行政は、そういった問題で何が一番重要な課題なのかということをしっかりと把握することが大事だと思います。

―民間の力を活用した社会システムを構築し、循環型社会の実現を目指していますね

松原:行政だけでやる仕事というのはあります。けれども、そこに一般の企業や団体を巻き込んでやっていくとうまくいくというケースがあります。たとえば昨年、川崎市が51%出資して民間企業と連携し、地域エネルギー会社を設立しました。

 

福田市長が脱炭素社会を目指して、行政だけでやることよりも実績、経験のある企業・団体と一緒にやるということが問題解決に近づくということで、橘処理センターなど廃棄物処理施設の発電を利用して、その電気を売るという会社です。

 

この会社については資金的な問題もありますので、横浜銀行や川崎信用金庫、JAなどからある程度資本を入れていただくことになりました。

 

その他にもっと専門的な技術を持った方々にも会社の中に入っていただいて、廃棄物処理施設で発電した電気を、まずは公共施設などに流すという構想です。こういった民間の力を取り入れて循環型社会を目指しています。

自分の得意分野を地元のために発揮してほしいと訴える

防災・減災対策で「想定外」をなくすことが重要

―小中高校の教育の課題は何でしょうか

松原:川崎市には7つの区がありますが、義務教育の小中学校では、学校の教育内容が同じなのに、区によっては中学受験率がとても高かったりします。大きな差が出てしまう原因は、やはり地域格差があることでしょう。この格差の解消が課題ですね。

 

また、私自身は、小中学校時代の先生が本当に素晴らしくて、学校に行くのが楽しくて仕方がなかったのです。そういった、学校に行くのが楽しみになるような教育環境がとても大事だと思います。

―子育てについて、中原区の課題は何でしょうか

松原:待機児童問題がありましたが、この数年で、保育園の数自体は足りるようになりました。ただ、兄弟入園が離れ離れになってしまったり、自分の第1希望の保育園に入れないなどのミスマッチをなんとか解消できるようにしなくてはいけません。

 

保育園をつくったのはいいけれど、保育士が足りないという問題も起きています。保育士の免許を持っている人は大勢いるのに、途中で職を離れてしまう方もいて、そういう方々を掘り起こしていけばいいと思います。

 

ただ、給与が低い、休みがとれない、事故が起きたときに責任を問われるなど、やはり戻ってこられない理由がありますから、そこも課題ですね。

―地元・中原区をどんな街にしたいですか

松原:能登半島地震で改めて、街の防災対策、減災対策をしっかりたてていくことが大事だと思います。何かあれば想定外で片付けられてしまいますが、想定外をなくしていかなければ防災対策はできません。

 

もし仮に、能登半島地震のような大地震が起きたならば、どうしたらいいのか。特にタワーマンションに住んでいらっしゃる方々は逃げ場がありません。ですから色々なことを想定する必要があります。その上で、災害に強い街にしたいですね。

 

―読者の方にメッセージをお願いします

松原:自分の家族を愛するように、地域を愛して郷土愛を持っていただいて、その郷土愛が大きくなれば、国を想う気持ちも出てくるでしょう。まずは家族が好きなように地域をもっともっと好きになってほしいです。

 

そのためにはどうしたらいいかといえば、他人任せではなくて、自分ができることは積極的にそういった色々な催し物や町内会・自治会活動などにできるかぎり参加していただいて、自分の得意分野を地元のために発揮していただければ、素晴らしい中原区になると思います。

 

この記事のライター

現代社会は、地縁、血縁、社縁(職場の縁)が希薄になり、個々人がバラバラに分断され、多くの人が孤立するようになりました。そんな社会を修復するにはどうすればいいか。その一つの解が、新たなコミュニティを創造することだと思っています。

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