■中原市民館での「保育付き講座」の保育が出発点
―にじの会はどういう経緯で結成されたのでしょうか
河村:中原市民館ではいろいろな講座を開いていますが、1980年頃から子連れで講座を受けに来る人が少しずつ増えてきました。しかし、講座を2時間受けるとなると、子どもはその時間、じっとしていなければならず辛い。
そこで、子どもが多いならば、子ども同士を集めて過ごす方がいいのでは、ということになり、川崎市の教育委員会が、保育士ではなくても、子どもを見守る人たちを育てようと保育ボランティア養成講座を始めました。その受講者がグループになって、中原市民館で講座中のお子さんを預かることになりました。
―現在の18人の運営メンバーの方はどういう顔ぶれですか
河村:だいたいの人は、中原市民館での講座で知り合った方々です。特に若いメンバーは、子育て講座を受講して、その間、お子さんを預かってもらった方が、「子どもを預かってくれてとても良かったから、私もお手伝いしたいです」と言ってグループに入ってくれるケースがほとんどです。
自主事業「にじのひろば」@小杉御殿町二丁目公園
■コロナ禍で屋外保育の自主事業を開始
―中原市民館での活動以外に自主事業もされていますね
河村:コロナ禍で、中原市民館での講座がなくなったので、保育ボランティアも不要になりました。そこで公園に集まったりしていたのですが、街で保育した親子さんに出会うと「行き場所がないので困っています」と言われるのです。
それなら外遊びならば大丈夫と考え、自主事業として、2020年から小杉御殿町二丁目公園で、屋外での自主事業として「にじのひろば」を始め、今では屋内のコミュニティスペース「おおきな木」でも開催しています。
―コロナ禍も収束しましたが、今後はどうされますか
河村:やめようかなとも考えましたが、「にじのひろば」に来るお母さんたちや子どもたちをみていると、本当に外遊びを知らないんです。保健師さんも「赤ちゃんが10ヶ月位になってよちよち歩きできるようになったら、砂場デビューしてもいいわよ」とおっしゃるそうですが、言われてもどうしていいか分からない。
一方、ただ遊びに来ているだけではなくて、お母さん同士でしゃべったり、私たちと話すことで、ストレスの解消になります。話してみると、みんな同じことを思っているんだということがわかって、共感しあえたりもします。それだけでも「私だけじゃないんだ」と思い、子育てが楽になります。
そういうことがとても多いので、「これはやめられない」と思っています。お部屋の中で遊ぶのと外で遊ぶのでは、まったく違うので、ちょっときついけどやるか!と。
葉っぱ1枚小枝1本でも子どもたちはすごく喜んで拾ってくるし、どんぐりなどがあれば、大はしゃぎです。そういう自然に触れ合う感性はとても大事だと思います。おもちゃがなくても、道具がなくても、身の回りの物が何でも遊び道具になるんです。創造性も培えます。
地域子育て支援センターにしかせでのイベント
■ママ友づくりに行政やボランティアが乗り出す時代に
―拠点事業として地域子育て支援センターにしかせの運営をされていますね
河村:地域子育て支援センターという場所だと月・水・木曜日に限られてはいますが、そこに行けば、必ず誰かいます。そういうところに、困ったときに来てくれればいいし、第2のお家として過ごしてくれれば私たちとしてもありがたい。
気持ちよくそこで過ごして、周りの人たちとおしゃべりをしたりするうちに、同じように悩みながら子育てしている仲間がいる、一人ではないんだと気づいてくれて、使ったものは親子で片付けたり、自分から積極的に何か始めたりしてくれればいいなと思います。
―長年、お母さん方を見てきて大きく変わった点はありますか
河村:昔と今とでは全く違います。先ほどの公園の砂場の話もそうですが、たとえば「白湯(さゆ)ってなんですか。どこで売っていますか」と聞いてくるお母さんもいます。理由を知らずに形から入っていくことが多いです。また、自分たちの子育てと今の子育ての方法が全く違うので、保育の基準にはなりません。
―ママ友のつながりも弱くなってきているのでしょうか
河村:すぐつながるのですが、濃くはないと感じます。子どもの預け合いを今でもやっている人はいます。でもなかなかそこまでの関係性を築くのが大変だったりします。それに、預け合いをするぐらいの濃い関係になると家族ぐるみの付き合いになるケースが多いですね。ママ同士だけではなくて、パパ同士も仲良くなります。
―ママ友づくりに行政や「にじの会」のようなボランティアが乗り出す時代でもあります
河村:行政などがおぜん立てをしたママ友づくりの場に行くことに、お母さんたちが慣れちゃっているなと感じます。やってもらうことが当たり前になってしまいます。そういう点では、子育て支援はちょっとやりすぎではないかと思うこともあります。ママたちが自分で今何が必要か考えなくても、既にそこに用意されているからです。
■運営メンバー同士が個性を尊重しあう
―グループが40年以上長続きした秘訣とは
河村:「昭和の時代から保育ボランティアしています!」というのが、キャッチフレーズですが、「にじの会」の名称には、七色の虹のように、ひとりひとり違う個性を持っていて、10人いれば10色の色があり、それぞれの個性が集まると、虹のようにきれいな一つのものになるという想いが込められています。
グループである以上、一つの目的に向かってはいるものの、違う捉え方をするメンバーがいていいと思っていて、みんな同じじゃなくていい、という部分で受け入れられるメンバーがそろっているからだと思います。
また、子育て講座でお子さんを預かったりパパが受講することもあったりと家族ぐるみでメンバーを知っていることも多く、家族みんながボランティア活動を理解してくれているので、長続きしているのだと思います。
―世代交代がうまくいっていますね
河村:40歳のメンバーが最年少です。ですから、その下の世代をどうやって取り込んでいくかが今後の課題で、今やっている活動の中で、やってくれそうなお母さんをお誘いできたらなと思っています。ママたちが行政や私たちのような活動から受けた恩恵を次世代につなげていきたいと思ってくれることが大事ですね。
地域子育て支援センターにしかせの運営スタッフ
■拠点事業「地域子育て支援センターにしかせ」の運営に注力
―活動の今後の展開は
河村:地域子育て支援センターにしかせでの活動がまだ2年目です。行政からは、他もやってみませんかと言われたりしますが、そうなるともっと人手が必要になってきます。今、子育て中のメンバーは、子どもが大きくなれば、もっとボランティアしやすくなるとは思いますから、状況次第かなと思っています。
ただ、基本的には私たちは中原市民館でつくられたグループなので、年配のメンバーは講座につく保育が一番の中心だなとは思っています。一方、若いメンバーは、拠点を求めています。それが地域子育て支援センターにしかせで、常に同じ曜日、同じ時間に行けば仲間がいるという場は大事で、そこを充実させることが優先ですね。
課題は、お母さんたちが「イベント頼み」なことです。コンサートがあるよと言えば、来場者がわっと来ます。イベントを楽しみにしているお母さん方がいるのはいいことですし、毎月、どんなイベントが今のママたちに必要かを考えたりするのも楽しいですが、今はまだ参加することだけで終わっています。
そんなイベントや講座を通して体験したことの中から、自分や子どもにはどんなものが向いているか、もう少し突き詰めて考えてくれること、そしてそこから積極的に動いてくれることを望んでいます。
イベントのない日でも息が抜けて、何気ないおしゃべりを楽しめる場であっていいと思います。ゆっくりしていける場であったほうが、家で起きたことなどをしゃべれるし、子育ての相談にも乗れたりしますから、その方が、大事ではないかと思うこともあります。
―読者へのメッセージをお願いします
河村:メンバーは常時、募集しています。みんなでつながりましょう!色々、経験して下さい。経験に優るものはありません。
「にじの会」ホームページ:https://imaxtg7.wixsite.com/nijinokai
現代社会は、地縁、血縁、社縁(職場の縁)が希薄になり、個々人がバラバラに分断され、多くの人が孤立するようになりました。そんな社会を修復するにはどうすればいいか。その一つの解が、新たなコミュニティを創造することだと思っています。