多様な人々が集う中原区ソーシャルデザインセンターの魅力

多様な人々が集う中原区ソーシャルデザインセンターの魅力

中原区ソーシャルデザインセンター(以下、中原区SDC)はまだ試行期間で、組織としては模索中ですが、「あなたのやりたい!で、このまちを元気にしよう」というキャッチフレーズのもとに、多様な人々が集っています。仲間づくりを通じて、「生きがいの発見」、「新しい価値の創出」、「抱えている課題のクリア」を実現しようとしています。

今回は「活動が何しろ楽しい!」と言うメンバー、杉妻(すぎのめ)謙さんにお話を伺いました。


多様な人と共に新たな価値を生み出す包摂的な組織

―中原区SDCとはどんな組織でしょうか

杉妻:中原区SDCはまだ試行期間なので、こういう組織だということは、言い切れません。あえて、中原区SDCとはといえば、「あなたのやりたい!で、このまちを元気にしよう!」というキャッチプレーズのもとに集まった中原区ゆかりの団体・個人の集まりです。

 

また、中原区SDCの特徴は、小学生からご高齢者まで年齢層も幅広く、社会福祉士や防災関係の方、市民活動のベテランの方など多様なメンバーがいることです。僕はそれがとてもインクルーシブ(包摂的)だなと思っていて、どんなひとも排除しないというスタンスが、すごく好きです。

―現在、宝さがし隊と交流会、課題チャレンジの3つにグループが分かれていますね。

杉妻:地域の資源を知ることをメインに活動するのが宝さがし隊で、様々な人や団体とつながることがメインの交流会、社会課題などの解決に一歩踏み込むのが、課題チャレンジというグループですね。

 

僕が属している宝さがし隊グループは、もともと地域の課題を知るグループだったのですが、社会課題の裏返しとしての地域資源、地域の魅力や強み的なものをみんなで探して勉強する会にしようということになりました。

 

例えば、中原区ではこども食堂が増えてきました。それは、地域資源ですが地域課題の裏返しでもあります。それだけ、格差や孤立している子どもがいるということだからです。だから、強みを勉強すれば、必然的に地域課題も見えてきます。

宝さがし隊には小学生も参加しているのですが、小学生を包摂してよかったのは、このような地域の課題や資源といった話をストレートに小学生にしてもちょっと難しいし、あまり楽しくありません。そこで、面白くするにはどうしたらいいかを考えて、「宝さがし」という言い方にしたのです。

ですから、私たちおじさん勢と小学生をどうやってフュージョンしたら良いか、子供と大人をどう両立させるかを考えたときに、面白い、楽しそうと感じてもらえることをコンセプトに活動を展開しました。

そうすると、イベントなどで活動を紹介した際に、子供たちから高齢者の方まで、立ち寄ってくれることが嬉しいですね。やはり、多様な人たちをインクルージョン(包摂)するということが大事だと改めて思います。

月1回の定例会「YORIAI」

仲間づくりで地域とつながる

―なんのために活動するのかということではどうでしょうか。「生きがいの発見」、「新しい価値の創出」、「抱えている課題のクリア」を掲げていますが

杉妻:僕自身は、生きがいというとちょっと大げさですが、やりがいを見出したし、新しい価値の創出ということでは、多様な人たちを包摂して新しい形をみんなで生み出していることです。また、個人的に地域との接点がなかったことを気にかけていていたので、地域とつながることできて、その課題がクリアになりました。

 

―やはり中原区SDCに参加することで、仲間づくりができたことが大きいのでしょうか

 

杉妻:同じ時間を同じ苦労をしながら、一つのものを創り出せる仲間ができたことが良かったですね。とても暑い中、苦労をともにしながら活動を紹介するイベントに参加する体験を共有することで、喜んだり反省したりすることは、とてもいい経験です。

―中間支援機能と主体的にやりたいこと実現するという二つの側面がありますね

杉妻:宝さがし隊では「宝の地図」といって、中原区の大きな地図の上に、地域の素敵な場所や魅力的な場所など、自分が大事にしている場所をシールでマーキングしてもらうというものを作りました。

 

宝さがし隊は、「宝」(地域資源)を見出すことがテーマなので、その「宝」を地図として可視化するということを、メンバーが主体的にやりたいこととして実現させたわけです。また、「宝の地図」をイベントにブース出展することで、他の市民団体や企業との協働という形になり、中間支援的にも展開しています。

地域資源を可視化した「宝の地図」

ソーシャルデザインの原点にこだわる

―宝さがし隊を杉妻さん自身はどういうふうに発展したいと思っていますか

杉妻:僕の原点は、「知る」→「気づく」→「変わる」ということを通じたソーシャルデザインです。ソーシャルデザインとは何かというと、暮らしの中の様々な課題に対して、一人ひとりの意識と行動が変容する機会を創ることではないか思っています。

 

なんのために地域課題を可視化しようと思ったかと言えば、「知る」ためには可視化が必要だと思ったからです。そうすれば、「気づきや問い」が生まれ、どうしたらいいのかと行動が変わっていくと思うのです。その入り口が、地域課題の裏返しである地域資源の「宝の地図」です。

 

ただ、もっといろんなものが出てくればいいと思っています。ご年配の方とご一緒すれば、また、別のものが生まれる気がします。例えば、武蔵小杉の昔の写真を集めて「なかはら昔物語写真集」などを創ることで、何かを知るきっかけができるのではないでしょうか。

こんなに梨の農家が多かったのかとか、中原区って本当は農業が強かったのかとか。それでは今、中原区の農業はどうなっているのだろうとか気づきが生まれます。可視化することで気づけることがあるのではないかと思います。

ただ、行動が変わるためには可視化するだけでなく、視点を変える必要があると思います。例えば、こども食堂を運営している人がどんな想いでやっているのか、訪れる子どもたちはどのような想いで通うのか、その人々の視点で共感的に考えることで、自分にとっての問いが生まれるし、自分ごと化できるのではないかと思います。自分ごとになることで、行動が変容すると思っています。

ですから、「宝の地図」はあくまでコンテンツの一つであって、色々なものを創っていきたいと思っています。その時大事なのが、メンバーとして一緒になった多様な人たちみんなの想いを包摂するための工夫を通して、思ってもいなかったものが生まれることだと思います。

楽しいことが一番!

―そこまで積極的に関わっている熱意の源は

杉妻:楽しいからですね。なんで楽しいかと言えば、知る、気づくということを多様な人たちとともにやれるからです。


僕は社会福祉士の資格を持っていますが、社会福祉士(ソーシャルワーカー)の役割とは、様々な困りごとを持っている人を対象としてエンパワーメントすること。その人がもともと持っている力を最大限引き出して、その人自身の力で乗り越えてもらう相談援助です。


そしてもう一つの役割が社会を対象として、誰もが暮らしやすい社会をつくっていく、社会資源の開発という社会の側を変えていくミッションがあります。

 

例えば、地域にこども食堂のようなものがなければ、こども食堂という新しい資源を作るということもあるし、そのためには法律を作っていくという働きかけもあります。僕自身、そういうふうに社会をアップデートしていくことをやりたいというのが、想いとしてあります。それが、今の活動の原動力です。

そういう文脈もありますが、一方で、僕個人が地域で孤立していたおじさんであり、子どもたちと一緒に活動することが楽しいし、年配の先輩たちにも相談して、色々なことができたら楽しいなとシンプルに思っているのが、積極的に活動している理由です。

―読者へのメッセージをお願いします

杉妻:障がいがある方など、もっと様々な人たちが入ってきて、よりインクルーシブな中原区SDCになってほしいですね。多様な価値観の人々が集まることで、知る機会、気づく機会が多くなり、工夫することでもっと良いものや新しい価値が創り出せるので、さらに楽しくなるかなと思っています。


みんなで新しい価値を地域社会に生み出しましょう!

■YORIAI:中原区SDCの定例の交流・共有・提案の場です。
【開催】:偶数月・第三水曜日18:30~、奇数月・第二土曜日10:00~
【場所】中原区役所会議室

■中原区役所ホームページ:https://www.city.kawasaki.jp/nakahara/page/0000109448.html

■お問い合わせ
川崎市中原区役所まちづくり推進部企画課
Tel:044-744-3149、Fax:044-744-3340
Mail:65kikaku@city.kawasaki.jp

この記事のライター

現代社会は、地縁、血縁、社縁(職場の縁)が希薄になり、個々人がバラバラに分断され、多くの人が孤立するようになりました。そんな社会を修復するにはどうすればいいか。その一つの解が、新たなコミュニティを創造することだと思っています。

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