■型も正解もないコンテンポラリーダンスに人が集まる
―原点は新体操だそうですね
藤平:小学校で新体操を始めて、競技にもよく出ていましたが、「選手コースに行くなら、クラシックバレエを習ってください」と言われて、近くのバレエ教室に行きました。
新体操というのは細かく点数が付きますが、バレエにはそれがないことが子ども心に衝撃で、美しいことが基準ということではまってしまい、新体操はやめて小学校2年生の時にバレエの道に進みました。
―今、活動しているコンテンポラリーダンスとの出会いは
藤平:高校を卒業してオーストラリアに留学しているときに出会ったダンスの先生が、衝撃的に自由なダンスをする人で、それがコンテンポラリーダンスとの出会いでしょうか。また、日本でもコンテンポラリーダンスの作品と出会うことが結構あって、色々な舞台を観に行くようになって、型も正解もない自由なコンテンポラリーダンスにじわじわとのめりこんでいきました。
―ダンサンブル結成の経緯は
藤平:コンテンポラリーダンサーとして活動していましたが、「ダンスを踊りたいけれど、どうすれば踊れるか分からない」という方が、私の周りに3人同時期に偶然いて、「それじゃ、クラスでもやりますか?」という感じでレッスンを始めました。
そのクラスで「日常の動きなどもダンスになるんですよ、自由なんですよ」と言っていたら、だんだん人が増えてきて、その人たちの動きが本当に面白くて、「これは皆さんの動きを集めて舞台にできる!」ということになりました。
―ダンサンブルという団体名の由来は
藤平:ダンサンブル(Dancénsemble)は、ダンスとアンサンブルを掛け合わせています。様々な楽器が一曲を奏でるアンサンブルみたいに、色々な価値観やバックグラウンドをもつ人が集まって一つのダンスを作ったり、一つの場を作るようになっていったらいいなと思ってつけました。また、フランス語では「一緒に踊ろう」という意味だそうです。
■多種多様なクラス・ワークショップを展開
―クラス・ワークショップはどのようなものがあるのでしょうか
藤平:JR南武線向河原駅のすぐそばにあるNECの公開空地で、NECプロボノ倶楽部さんと中原区役所さんとダンサンブルが一緒になって、色々な方が交流できる場を作ろうと、「誰でも踊れる!コンテンポラリーダンスワークショップ」を開催しています。
中原区役所さんは、高齢者の孤立化をなくそうという一環で、高齢者の方が来て踊ることを意図していましたが、やっていくうちに子どもたちが参加したり、車いすの方がいらしたり、色々な方に参加していただいています。
このワークショップには、ぜひ一度参加してほしいですね。毎月、第3土曜日の午前11時~12時にやっています。無料ですし、予約も必要ありません。このワークショップが、一番、ダンサンブルらしいかなと思います。
あとは「作品づくりワークショップ」というのがあって、こちらはダンサンブルが出演する舞台の作品を創っていくワークショップです。今年は7月6日(土)に自主公演がありますが、それに向けて作品を創り上げていきます。このワークショップもとても人気があります。
この2つのワークショップは自由に踊ることが多いのですが、自由なダンスが苦手な人もいます。逆に型が決まっている方が気持ちがいい人もいるので、バレエのクラスやタップダンス、ヨガといった型のあるクラスも開催して、どちらでも参加できるようにしています。
老若男女が集う「誰でも踊れる!コンテンポラリーダンスワークショップ」
■訪問ワークショップで人が集まるところに乗り込む
一方、私としては、全国の人に踊ってもらいたいなと思っていて、人が集まっているところに私が行ってしまおうと去年から頑張っています。小学校や高校、福祉施設あるいは企業さんにも出向くようになってきていて、「踊りってどうやるの?」という人がいっぱいいるところに、「はい、やるぞー!」と乗り込んで、訪問ワークショップをしています。
―どういう形の訪問ワークショップがあるのですか
藤平:基本的には身体を動かすことを楽しんだり、参加者同士の距離感を縮めていったりすることを目的に、参加者の自由な発想で踊るような内容が多いです。また訪問先の要望や課題感に合わせてアレンジができます。たとえば、福祉関連の企業さんは色々な施設のリーダーを集めて、リーダーシップをとるとはどういうことなのかということをコンセプトにワークショップを進めてくださいという依頼がありました。ケースバイケースで柔軟に対応しています。
―舞台表現も活動の柱の一つですね
藤平:舞台って、表現する人が舞台上にいて、観客も必ずいます。プロのダンサーたちの舞台だと、一糸乱れずすごい動きをしたりして、観客もすごいなぁと観ると思うのですが、ダンサンブルの舞台はちょっと違っていて、ダンスが初めての人などがありのままに表現している姿が、観客にとってとても距離感が近いのだと思います。
お客さんにはパフォーマンスを観ることで元気をもらっていただき、最後は必ずお客さんにも一緒に踊ってもらうんです。ですから、舞台ですが、観るだけではないんです。最終的には出演者も観客も垣根なく踊っていて、お互いにエンパワメントし合っている、そういう意味で舞台はダンサンブルにとって、大きなパワーの源ですね。
―ダンサンブルのレッスンは笑いが絶えないそうですね
藤平:本当にお腹が痛いくなるほど笑いますね。結構、自己表現って恥ずかしいじゃないですか。やるのも恥ずかしいし、見られるのも恥ずかしいし。それをシリアスに捉えると辛いですが、みんなで笑っちゃってると楽しくなります。
ダンサンブルが笑いの絶えない場になっているというのは、参加者の皆さんが、本当に面白くて優しい人ばかりだからです。嫌なことをいう人もいないし、風通しが良くて、すごくいい雰囲気です。だから、ちょっと間違っていても、「オッケー、ドンマイ!」みたいな感じで終わっています。
笑いが絶えないレッスン
■自分にも他人にもOKサインを出して楽しみあう
―多様性を大事にされていますね
藤平:ダンサンブルをやりたいなと思った理由の一つが、18歳でオーストラリアに留学していましたが、日本に帰国したときに少し雰囲気が暗いな〜と思ってしまったんです。みんながそれぞれに「あー、楽しいな。自分らしく生きてるな」と思って生きていたら、もうちょっと明るい雰囲気になるなと思ったのです。
身体表現というのは、自分にOKを出していないと身体を動かせません。すごく恥ずかしいので、自分で自分に「この動きもOKだよ」とサインをだしていかないと踊れないんです。自分の動きや自分の存在を「まぁ、いいか!」とか「OK、OK」とかしていかないと身体表現はできません。
だから、「変かもしれないけど、いいよ!」という感じで、自分を認めてあげる。そして自分だけでなくて隣の人も肯定的に認めてあげると、お互いのいい面が見えてくるんですね。
多様性を大事にするというと堅苦しいですが、お互いに楽しみあうということが好きだし、そういう環境でいたいなと思います。
―今後の展開はどう考えていますか
藤平:舞台活動は出演する人も観に来る人もとてもパワーをもらえるので、コンスタントに続けていきたいと思っています。もちろん、母体としてクラス・ワークショップも。
―読者へのメッセージをお願いします
藤平:ダンサンブルに興味を持ってくださった方は、クラスやワークショップに参加するとか舞台を観に来るとか、ボランティアメンバーとして一緒に活動してみるとか、色々な方法があるので、どんな形であれ、関わっていただければ嬉しいです!
ホームページにどんなクラスやワークショップがあるか、また、舞台公演情報も載っているので、ぜひ、そちらをご覧ください。よろしくお願いします!
ダンサンブル・ホームページ:https://www.dancensemble.com/
現代社会は、地縁、血縁、社縁(職場の縁)が希薄になり、個々人がバラバラに分断され、多くの人が孤立するようになりました。そんな社会を修復するにはどうすればいいか。その一つの解が、新たなコミュニティを創造することだと思っています。