川崎市議会議員・市古次郎氏に訊く「義務教育」の問題点

川崎市議会議員・市古次郎氏に訊く「義務教育」の問題点

憲法第26条で義務教育は無償であることが定められていますが、教材費、給食費などが親の負担にされています。

保護者負担の一番大きな支出が給食費で、現在、491自治体が無償化しているのも関わらず、川崎市では、いまだに無償化されていません。

一方で、教員の人手不足も深刻化しています。その原因に過重労働に加えて、校長などによるパワハラ問題があるようです。義務教育の現場では、様々な問題が山積しています。


義務教育における「隠れ教育費」を無償化に

―学校の教材費の軽減、また、小中学校での給食費の無償化を訴えていますね


市古:学校の教材費は、たとえば柔道着などわずか数回しか使わないにもかかわらず、それを購入して家にずっと置いておく、また彫刻刀や算数セットなども一定の期間しか使いません。ですから、そういうものを果たして家庭で購入する必要があるのか、という声が届いていました。

海老名市は市費でこれらのものを購入して、柔道着や彫刻刀などは学校管理にして使う時に貸し出すことにしています。どういうプロセスでそうなったのかを調べたら、まず保護者にアンケートをとって、保護者負担の実態を調べ、学校と教育委員会と保護者の検討委員会を発足させて、プロセスを明確にして決めていきました。

ですから、まず保護者がどういうことを求めているのか、そのプロセスを明確にして、検討することが大事です。義務教育は無償というのが、憲法第26条に書かれていますが、いわゆる「隠れ教育費」というのが、結構いっぱいある。教材費や給食費、あるいは修学旅行費なども高い。

本来はすべて無償にすべきだとは思いますが、優先順位をつけて無償化を進めていくべきではないかということで取り上げています。川崎市も保護者負担の軽減については重要だという認識を示しているので、次は具体化して、やはりプロセスを踏んで市民が参加する形で軽減を進めていきたいと考えています。

街頭でシールアンケートをとり市民の声を集める

―学校給食費については


市古:保護者負担の一番大きな割合は給食費です。給食費の無償化の動きはどんどん進んでいて、文科省が2017年に調査したところ、76自治体であったものが、私たちの今年8月の調査だと、491自治体まで無償化の自治体が広がっています。

この間、川崎市でも給食費の無償化について署名が11,171筆集まって、私たちのところにも多数の署名が届きました。川崎市も保護者から声があがっているということと、憲法で義務教育は無償とうたっているのだから、変えるべきです。

若い人たちの賃上げで経済を回すことが根本

―若い人たちが「経済的負担が大きいから子供を作らない」と言っていますが、これでは少子化はとまりません


市古:失われた30年と言われる中で、結婚するまでの環境が本当に厳しくなってきています。ですから、若い人たちの賃上げによって経済を回していくことがまず根本にあります。ちゃんとまともに働けば、まともに生活できる社会にしていくべきです。

奨学金を返済する20代もとても多い。若者たちに多額の借金を背負わせている国はおかしい。高すぎる学費を下げていくということが重要です。そうでなければ、少子化はとまりません。

有名なのが、兵庫県明石市の泉房穂・前市長さんです。明石市は子育てに市政を振り切ったんです。保育料を第2子から無料化、中学校の給食費も無償などを打ち出した結果、子育て世代がどんどん流入してきました。

すると、子育て世代はおカネを使うので、明石市の税収は上がったんです。その税収で、今度は高齢者や障がい者を支援するという好循環が生まれました。

児童の放課後現場を視察

―保育士さんの人手不足も取り上げていますね


市古:労働環境が非常に劣悪です。まず給料が安い。そして配置基準(子どもの年齢ごとに定められた、最低限必要な保育士の人数)があまりにも常識を外れています。たとえば、1歳児では、子ども6人に対して、保育士さん1人という基準なのです。


まだ1歳児ではちゃんと歩けなかったりもするので、かりに火事が起きたときなど、6人の子どもを1人の保育士さんでどう安全に避難させられるのか非常に疑問です。


さらに、保育士さんをやめた人は、なかなか保育士として戻ってきません。潜在保育士さんはとても多いのですが、みなさん、いい思いをしていないからです。まずは保育現場の環境を良くしていくことが最優先で、その上で、保育士さんに戻ってきてもらうしか道はないですね。


教員がパワハラにさらされて辞めていく

―教員の人手不足も深刻です


市古:教育現場が非常にブラックになっていますね。残業代もまともにつきません。長時間労働なのに、基本給にみなし残業代だけで、あとは何時間働いても残業代が増えないシステムです。これが野放しになっているので、どこまでも残業時間が延びてしまいます。

実は、今、調べていることがあって川崎市幸区の市立夢見ケ崎小学校というところで、パワハラ事件がありました。校長が職員に対して物を投げる、腕をつかんで校長室から出さないというパワハラが常態化し、職員三人が精神を病んでしまったという記事が出たのです。

その記事が出てから、私たちのところに、先生たちから匿名で「うちの学校はもっとひどい」という声がかなり届きました。長時間労働で先生たちがやめていくだけではなくて、パワハラでもやめていく先生が少なからずいるようなのです。川崎市は学校現場でのパワハラが野放しになっているのではないかと調査中です。

重要なことは、ハラスメントを通告・通報した人のプライバシーが守られなければいけないことです。そこが法律用語でいう「義務」なのですが、今は「努力義務」になっています。絶対守られなければならないではなく、留意しなければならないということになっています。

そうすると、通報したら、すぐ校長の耳に入って、なおさらパワハラを受けるのではないかと、先生たちは怯えてしまいます。また、学校というのは閉ざされた空間なので、自分がやられていることは仕方ないことなのかと追い込まれて心が病んでしまう。

先生方の話を聞いていて、私は「これはまずいな」と思いました。ハラスメントは人権の問題だと思っているので、子どもたちを教育している教育現場で人権無視が野放しになっているというのは、子どもたちにも悪影響が及ぶのではないかと思わずにはいられません。

教育現場の問題に切り込む

自分たちの力でルールは変えられるという成功体験が大事

―一方で、子供は社会で育てるという風土が日本にはなく、親の自己責任にされてしまいますが、意識を変えるにはどうすればいいでしょうか


市古:「自分たちの力でルールって変えられるんだ」という成功体験…署名活動など、市民の方から声を上げてもらって、それを議会が受け止めて、変えていく…自分たちの声が社会に反映されるんだという成功体験を積み上げていくことで、意識が変わることにつながるのではないでしょうか。

―中原区をどんな街にしたいですか


市古:中原区というのは、選挙のたびに住民の4割近くが入れ替わるそうです。新しい方がすごく入ってくる町なので、新しい方も昔からいる方も住みよい街というのがあるべき姿だと思います。

昔ながらのお祭りもあります。一方で、新しい方たちが新しいイベントをどんどん開催していたりもします。本当に多彩な街だと思うので、色々な人たちがいて、色々なことで地域を活性化させようとしている活動をしっかりと支援していきたいと思っています。

また、一極集中ではない街づくりも必要だと思っています。たとえば、武蔵小杉駅周辺の道路はとてもきれいです。しかし、武蔵小杉から少し離れてしまえば、雑草が生い茂っていたりします。ですから、中原区全体が整備の行き届く街にしていかなければならないと思っています。

―読者へのメッセージをお願いします


市古:ハードルが高いと思わず、市議会議員をとにかく使ってほしいです!区民に使われてこその議員だと思っているので、色々な声を私に届けてほしいと思います。皆さんの声を行政に届けるのが議員の一番の仕事だと思っていますから。

市古次郎ホームページ:https://ichiko-jiro.jp/

この記事のライター

現代社会は、地縁、血縁、社縁(職場の縁)が希薄になり、個々人がバラバラに分断され、多くの人が孤立するようになりました。そんな社会を修復するにはどうすればいいか。その一つの解が、新たなコミュニティを創造することだと思っています。

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