■子どもたちのために地域の方々がつながりあう
―中原区100人カイギをやろうと思い立ったのはなぜですか
朝山:私が代表理事を務める認定NPOキーパーソン21では、子どものキャリア教育の活動をしていますが、地域の中で、子どもたちのやりたいことが理解されて、大人たちがその「やってみたい!」を応援する地域になってくれたらなと思っています。
そのためには、まずは地域の方々が知りあう、つながりあうことが大事だと思っています。地域にどんな方がいるのかもわからないで暮らしているのは、ちょっと寂しい。
―そのためには100人カイギがうってつけだとおもったわけですね
朝山:そうですね。そこでFacebookで、中原区でも100人カイギをやりたいとコメントしたところ、色々な人が「私も一緒にやるよ」と言ってきてくれました。また、私が個別にお声がけもしました。さらに、中原区ソーシャルデザインセンターでも、仲間を募りました。
―100人カイギとはどういう会議でしょうか
朝山:日本各地で開催されている活動で、地元で活躍している人を定期的に招いてお話をしていただき、その登壇者が100人になったら解散するというものです。目的は、地域の方々が横のつながりを持つことで、コミュニティを形成すること…「この出会いを楽しもう!」がコンセプトです。
―登壇者の人選というのは、どうされていますか
朝山:運営メンバーみんなで登壇者候補のリストをつくり、スケジュールを調整し、候補者の方々にオファーをしています。また、ご自分から手を上げてくださる方もいらっしゃいます。
運営メンバーで考えたこだわりとしては、中原区在住者や在勤者など、中原区になにかしらゆかりがあることは大事だよねということで、登壇してもらっています。
毎回なごやかに行われる中原区100人カイギ
■認定NPOキーパーソン21の活動とは
―朝山さんが代表理事を務める認定NPOキーパーソン21はどういう活動ですか
朝山:子育ての最中、中原区に住んでいて、子どもたちも中原区の学校に行っていました。20数年前、長男が通っていた宮内中学校がとても荒れていました。そんな中で、息子が中学3年生の夏休み前に「僕は高校に行かない」と言い出したのです。
高校へ行かないということに驚きましたが、中学校までが義務教育ならば、高校へ進学するかしないかは自分の意思で決めてよいのだと初めて気づかされました。
子どもがそうしたいと思うように、子ども自身が自分で考えて選択し、行動して責任をとる子に育てたいと思うようになりました。そのためには親だけでは無理で、地域の皆さんも一緒に子どもを育ててくださいという想いでNPOを立ち上げました。
―団体名でもある「キーパーソン」とはどういう人ですか
朝山:子どもにとって人生を変える人とか、そのきっかけになった人ですね。それは親だったり、先生だったり、地域の人だったり、様々です。子どもの人生にちゃんとコミットする大人たちがいっぱい増えてくれたらいいなと思っています。
―わくわくエンジン®という言葉を大事にされていますね
朝山:自分がわくわくして動き出したくなる原動力のことなんです。わくわくする気持ちで自発的に動いたら、挫折や失敗してもまた起き上がって頑張れると思うんです。でも、やらされ感でやっているときは、ポキっと折れてしまいやすい。
あの人がこう言うから、世間体があるから、こっちの方が得だからということではなく、自分が考えて判断したことを大事にしてもらいたい。それが幸せではないかと。自分の意思があること、その意思の裏には必ず理由があります。ですから大人は子どもの夢中になっていることを応援してあげればいいのだと。
大人が子どもを今ある社会の常識や固定概念の枠にはめ込もうとしている…それでは、まったくわくわくしませんね。
キーパーソン21のプログラムで子どもと大人が対話中
■自分の中のわくわくする原動力を発見する
―学校ではキャリア教育プログラムをやられていますが、どういう内容ですか
朝山:「おもしろい仕事人がやってくる」というプログラムでは、「あのおっちゃん、おもろいな」という方をたくさん、子どもたちにじかに紹介しています。様々な人にいっぱい触れることで、色々な価値観や働き方、生き方があるということを子どもたちに見せています。
「すきなものビンゴ&お仕事マップ」では、自分の人生をどうすると言われても、分からなかったりします。そういう時に自分の動き出したくなるわくわくする原動力は何なのかを発見するためのゲームです。
たとえば、野球が好きという子がいても、野球が好きというのは、名詞的ワクワクです。わくわくエンジン®は動詞的で、「なんで野球でワクワクするの?」と問いかけます。すると、「作戦、戦略を立てるのが好き」という子や「チームのみんなで力を合わせるのが好き」という子、「筋トレや素振りで自分の能力を高めるのが好き」という子もいます。
同じ野球でもわくわくポイントは違うのです。そこを引き出してあげて、わくわくするポイントをクローズアップして子どもたちに気づかせてあげることができます。
「コミュニケーションゲーム」では、大人と子どもが3つのシチュエーションで、即興劇のような感じでやるゲームです。これは、子どものいいところを発見する大人のトレーニングです。大人はすぐ否定的な反応をしがちです。子どものダメなところを指摘するのではなく、良いところを見つけます。
■子どもたちの「やってみたい!」を応援する大人たちがいる街へ
―今の子どもはチャレンジしないと言われますが
朝山:それは、子どもができると信じないで否定する大人の問題なのです。子どもが何か発言しても、すぐに否定して抑えつけてしまいます。失敗しても「ナイストライ!」と声をかければ、子どもだってどんどん積極的に口を開きます。
「かっこいい大人ニュース」では、地域の人たちが子どもたちと「どんな仕事をしているのですか」などとか「お給料いくらですか」など、大人と子供のポジティブな対話の場にしています。大人のことをもうちょっと踏み込んで知ることができます。
―日本全国でキーパーソン21のネットワークが広がっていますが、今後の展開は
朝山:「ジュニアわくナビ」(子どものわくナビ)を広めたいと考えています。「わくナビ」とは、私どもの講座を受けてもらうとなることができる「わくわくナビゲーター」のことです。子どもの中からわくわくエンジンを引き出すことができる人ですね。
これは大人向けに行っていたのですが、最近、子どもたちから「わくナビ」になりたいという要望が出ています。そこで、「ジュニアわくナビ」として、小学生から高校生までの子どもに「わくナビ」をしてもらい始めています。
―読者へのメッセージをお願いします
朝山:子どもたちがわくわくエンジン®を発見すると、「やってみたい!」がたくさん出てきます。その「やってみたい!」を子どもたちが言語化し、理由も書いてもらいます。そして、地域のみんなでそれを応援したいのです。
ちょっとお節介な大人たちが地域にたくさんいる街になれないかなと。だから、まずは中原区100人カイギを通じて、街の人たちがお互いに知り合うことが大事だと思っています。
■中原区100人カイギホームページ:https://100ninkaigi.com/area/kawasaki-nakahara
■認定NPOキーパーソン21ホームページ:https://www.keyperson21.org/
現代社会は、地縁、血縁、社縁(職場の縁)が希薄になり、個々人がバラバラに分断され、多くの人が孤立するようになりました。そんな社会を修復するにはどうすればいいか。その一つの解が、新たなコミュニティを創造することだと思っています。