舞台に立ちたいと思わせる「なかはらミュージカル」

舞台に立ちたいと思わせる「なかはらミュージカル」

なかはらミュージカルの魅力は、プロのミュージカルと違い、観客が観る側に回るだけではなく、自分も舞台に立ちたい、あるいは、自分の子どもを舞台に立たせたいと思わせるところ。12年もの長きにわたって活動を持続できたのは、キャストの「やってほしい!」という声だとか。実行委員長の奥平亨さんにお話を伺いました。


中原区政40周年の市民提案型事業としてスタート

―なかはらミュージカルはどのような経緯・目的で結成されましたか

奥平:前身に「なかはらアクトストリート」と言うイベントが当時あったのですが、中原区の区政40周年の市民提案型事業として、2012年度(※実際には2013年)に「なかはらアクトストリート」のスピンオフイベントとして市民ミュージカルを開催しました。

―もともとは行政が主導してのイベントだったのですね

奥平:そうです。行政の呼びかけに応じて、市民が声を上げて一緒に作ったというのがスタートだと聞いています。その後の経緯でいうと、2年目から6年目までの5年間は、中原区の地域課題対応事業として継続していたというのが歴史的な経緯です。

 

当初の6年間は中原区役所が助成をしてくださり、区の事業として開催していましたが、7年目から中原区の事業というわけではなくなったのですが、当時の実行委員の方々が自主事業として継続したいということで、7年目からは市民自主事業として開催しました。

歌って踊る♪

―現在の運営メンバーはどういう方がやられているのですか

奥平:今はキャストの方であったり、ボランティアで裏方に入っている方であったりする方々が8名、実行委員として参加しています。この実行委員で企画を立てたり、進行の調整をしたりしています。私を含めて全員、本業の仕事を持っているボランティアの方たちが集まってやっています。

―運営に「青年部」というのがあるそうですね

奥平:小学校1年生以上からの参加可能ですが、10年以上活動していると、たとえば、7歳だった子が、10年経てば17歳になります。中高生であれば働いている方もいます。やはり学校の授業や仕事などが優先されるので、中学生や高校生ならば部活が忙しくなり、いったん離れる方もいらっしゃいます。

 

その方たちがもう一度出演したいと戻ってきてくれたり、あるいは、キャストとしての参加では練習の拘束時間が長くなってしまうので、スタッフとしてお手伝いをしたいという高校生以上の方が昨年あたりから来てくれていました。

 

そこで今年度から、その方たちを集めて、「青年部」という正式な組織にして、実行委員会の下に位置付けました。だいたい高校生以上の方がそこに所属されていて、ボランティアなのですが、スタッフやキャストとして活躍してくれています。

小学生から大人まで世代を超えたキャスト

―ミュージカルのキャストは公募ですか。また、オーディションはありますか

奥平:キャストは100%公募です。もちろん、例年応募してくださる方もいらっしゃいますし、新規でという方もいらっしゃいます。オーディションはありますが、最近は、応募していただいた方は全員出演しています。オーディションは必ずやっていますが、選抜と言うよりは声質などの特性を見る、配役の情報を得るためのものです。

―ミュージカルのキャストは世代的にどのような割合になっていますか

奥平:今年は総勢67名が参加してくれていますが、小学生が31人、中学生が11人、その他は大人で25人です。公演が4回あり2組に分かれるので、1公演で42人程度が出演します。

 

本番が迫り通し稽古が行われる

―今回のミュージカルは「VOICE」という作品ですが、どういうストーリーでしょうか

奥平:なかはらミュージカルは、一貫して中原区の史実に基づいたオリジナルのミュージカルでやっているのが特徴です。第1回では二ケ領用水を、その後では多摩川や川崎大空襲、中原区の桃などをテーマに上演してきました。

 

この「VOICE」というのは、アミガサ事件という約100年前、中原区の御幸村と言われる村で、実際にあった陳情事件を基に作品化しました。多摩川は「暴れ川」ともいわれて、たびたび氾濫してしまうので、堤防を作ってほしいという住民の声があがったのです。

その時にアミガサ事件といって、編み笠をかぶって顔を隠して、御幸村の人たちが県庁に陳情に行ったという事件があるのです。当時は、直接住民がお上に盾つくことがご法度だったので、事件と呼ばれたのです。今回は、その事件で、お上に声を上げた時の前後を描く作品になっています。

 

VOICE」というのは、まさに声を上げるということです。サブタイトルが「Always rising after a fall」とありますが、これは、日本語では「七転び八起き」と言う意味です。何度転んでも最後に立ち上がって声を上げれば、世の中を変えることができるというメッセージをサブタイトルに込めています。

コロナ禍でお蔵入りになった幻の作品を上演

我々がこの作品に思い入れがあるのは、実は、この「VOICE」という作品は、2020年に上演しようとしていたものです。2020年の3月の公演に向けて準備を進めていましたが、20202月末にコロナ禍による緊急事態宣言が出されて、学校が休校になりました。

 

我々は特に小中学生も出演しているので、本公演からおよそ2週間前ではありましたが、急きょ公演を取りやめることになりました。8カ月ほどの練習や準備を重ねた上での苦渋の決断でした。

 

2021年はまだコロナ禍が続いていたので、通常、我々はだいたい2日間4回の公演で、のべ1,200人程度の方に観ていただくのですが、2021年は、満席にすることができないということで、毎回100人の方に限定をして、また、動画をつくって、その動画を上映する会と言うのを開催しました。

 

2022年もまだコロナ禍が続いていたので、ワークショップと言う形で少人数で40人程度集めて、過去のなかはらミュージカルの作品を使って、短い期間のワークショップを開催しました。ブランクができてしまうと、子どもたちがなかなか継続して参加しなくなってしまうからです。

 

コロナ禍の中でもそういった活動をしていることで、昨年、4年ぶりに本公演を上演することができました。そこで、いよいよ、今年は、2020年に上演できなかった幻の作品をお披露目することになりました。

コロナ禍を乗り越えて

キャストの「やってほしい!」という声が長続きの秘訣

―活動されている中で、一番大変なことは何ですか

奥平:少人数のスタッフで運営しているので、色々な意味でボランティアスタッフへの負担が大きくなってしまうなどありますが、一番大変なのは、練習会場をどう確保するかです。

 

それと関連しますが、劇団として拠点を持っているわけではないので、稽古場があるとか、あるいは備品を置いておく場所がないので、小道具や備品を持ち歩きながら、流浪の民のように空いている場所ごとに移動しています。それが大変なことですね。

―12年という長きにわたって活動を継続できた秘訣は

奥平:実行委員の熱意ももちろんありますが、やはりキャストの方の「やってほしい!」という声ですね。「今年はいつから募集ですか?」とか、あるいは「来年はぜひ出演したい」とおっしゃっていただくので、そういう「場」がいるなと痛感しています。

―読者に向けてメッセージをお願いします

奥平:なかはらミュージカルの魅力は、観ていただくと、「私も舞台で歌いたい!なんで、私がこの舞台の中にいないんだろう」と思ってくださる方が結構いらっしゃることです。

 

そこが劇団四季のようなプロのミュージカルと違うところで、観客の方が観る側に回るだけではなく、自分も舞台に立ちたい、あるいは、自分の子どもを舞台に立たせたいと思わせるミュージカルです。ですから、ぜひ観ていただいて、次は舞台の上に立って下さい!

Voice Always rising after a fall〜】

日時:309日(1300~、1700~)

    310日(1300~、1700~)

場所:中原市民館

詳細:なかはらミュージカル・ホームページ:https://www.nakamyu.com/

この記事のライター

現代社会は、地縁、血縁、社縁(職場の縁)が希薄になり、個々人がバラバラに分断され、多くの人が孤立するようになりました。そんな社会を修復するにはどうすればいいか。その一つの解が、新たなコミュニティを創造することだと思っています。

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