川崎市議会議員・末永直氏に訊く「少子高齢化社会」への対応策

川崎市議会議員・末永直氏に訊く「少子高齢化社会」への対応策

能登半島地震で改めて防災への備えの必要性が切実に迫りましたが、欠かせないのが、地域住民の普段からのコミュニケーションです。町内会も高齢化が進んでいますが、改めて、若い世代の加入が求められます。

また、子育てにおいても、共稼ぎが当たり前になり、お子さんを遅くまで預けられる放課後児童クラブの充実が喫緊の課題となっています。さらに、後を絶たないいじめの問題にも、毅然とした対応が必要です。


町内会が活性化した「青年会」というサポーター制度

―能登半島地震がありましたが、これからの時代、ますます防災の強化が必要となります。そのための「地域力」の向上として町内会、自治会の加入促進を上げられていますね

 

末永:町内会などで、高齢の方が多いのが現実ですが、中原区木月伊勢町の取り組みが、とても参考になります。木月伊勢町町内会では、年間に主催する行事の運営を非会員が支えています。あえて町内会への加入を強制しないことで支援の輪を広げ、活動を活性化させることが目的の一つです。

 

この町内会が導入しているのが「青年会」と名付けたサポーター制度です。制度とはいえ、煩わしい規約は設けず、つながりから生まれる協力体制に委ねています。

 

町内会にとっては、役員の高齢化が進む中で、現役世代や子育て世代からの協力を得られることで負担軽減になる一方で、サポートする側にとっても、町内会の定期的な会議への出席や、行事日程に合わせ予定変更する必要もなく、自己都合で協力の有無を決めることができます。

こうした柔軟な体制を敷くことで、実際に、夏祭りの飲食の模擬店に料理好きな女性が協力したり、夜間パトロールに男子高校生が姿を見せたりと、得意分野をいかした支援も多いそうです。結果、町内会行事への参加者が増え、支援メンバーがまた新たな仲間を連れてくるといった好循環も生まれているようです。

 

この取り組みはこれからの町内会のモデルになると思っています。最初は、サポーターとして町内会に関わっていく中で、少しずつ意識が高まり、町内会への加入が促進されるのではないでしょうか。

 

―顔の見える関係づくりも大事ですね。これからますます大雨などの異常気象が頻発し、大地震発生の懸念される中で、どう顔をみえる関係作りをすればいいでしょうか

 

末永:これは大変、重要な課題です。なにかしら地域の組織に入って、友達を増やしていくことがベースになると思います。今の時代、インターネット上、たとえばフェイスブックで徐々に友達関係を形成することもできるので、SNSを活用した顔の見える関係というものも大事になっています。


能登半島地震で改めて浮き彫りになった防災への備え

私が川崎市に働きかけたのは、以前、台風のおかげで浸水被害にあわれた宮内地区です。土嚢ステーションを作ってほしいということで設置しました。また、備蓄倉庫の拡充の声も上がっていますので、きちんと対応していこうとしています。

いじめには「出席停止措置」で抑止力を働かせるべき

―一方で、子育て支援として、訪問型家庭支援などでの「家庭力」向上をあげていますね

 

末永:お子さんが生まれたすべてのご家庭に対して、役所の職員が訪問していって、しっかりとケアをしていく仕組みを児童委員の方々がやっておられますが、より深いケアと言うのが、一つの課題ではないかと思っています。赤ちゃん訪問だけではなくて、ゼロ歳、3歳、5歳など、定期的に訪問してケアすることが必要です。

 

―今や若いご夫婦の大半が共稼ぎですが、そうなると放課後児童クラブの充実は切実な問題ですね

 

末永:予算をきちんと立てて、補助金ももっと出すことによって、放課後児童クラブの活用をもっと積極的に行うことが必要ではないでしょうか。

 

―18時をめどに子どもを預かっていますが、もう少し遅くまで子どもを預けられる環境が必要ですね

 

末永:確かに、子どもを預けることができる時間をもっと遅くまで延長できるようにすることは、重要な課題です。ただ、それを実現するには、保育士さんの人手があまりにも不足しています。

―児童支援コーディネーターの充実ということもあげられています

末永:児童支援コーディネーターは、各学校に配置されていて、教科を教える担任ではなくて、いじめとか不登校などの問題が起きたときに専門で対応する人たちです。10年近く前には、まだそういった方々が少数だったのですが、近年は徐々に増えてきています。

 

―いじめなどはいまでも深刻な問題ですが、川崎市としてはどういう手を打っているのでしょうか

 

末永:いじめの加害者への指導、被害者への心のケアをしていますが、学校サイドとしては対応していると言っているのですが、私は対応が不十分だと思っています。

 

文部科学省には法律に基づいて、出席停止措置というものがあり、これは、いじめの加害者に対しての実質的な停学処分です。しかし、いまだかつて、この出席停止措置を行った例はありません。

 

いじめをする加害者への抑止力にもなりえるのに、それをしていない。ですから、被害者を完全に守り切れていないのではないかと言う課題があります。

 

川崎市でもいじめの件数は年々増えていますが、増えているのは、実態が明らかになってきているという面もあり、一概に悪いことではないのですが、やはり、いじめがなかなか根絶できていないのが現実です。

介護従事者の賃金を2倍に

―他方で、高齢者の方のケアも重要ですね

 

末永:介護従事者の賃金を大幅に上げることが必要です。できれば、2倍ぐらいに上げることが必要だと思っています。私の知人にも介護従事者が何人もいますが、本当に安い報酬で働いています。今度とも高齢社会は続いていくので、介護従事者の報酬をあげる措置をしなければ、人手不足は解消しません。

 

―少子高齢化社会ならば、保育士と介護士に報酬面でも手厚くしてあげるべきですが、実態はその逆ですね

 

末永:私の子どもも保育園に預けていますが、保育士さんも本当に大変です。また、介護士さんはご高齢者の下の世話までしなければならないのに、なんで待遇と報酬が低いのかと思わずにはいられません。

 

―今の時代、「100歳時代」と言われ、60代半ばで定年退職した方々もとても元気です。セカンドライフで働きたい。一方で、色々な分野で人手不足が慢性化しています。うまくマッチングできないでしょうか

 

末永:それは本当に必要だと思います。ですから、町内会や自治会に加入していただいて、どんどん積極的に地域社会に貢献していただければと思います。

より一層のインフラ整備を訴える

インフラ整備でさらなる経済発展を

―地元の中原区をどういう街にしたいですか

 

末永:私が力を入れているのが、インフラです。やっとJR横須賀線の新改札口ができましたが、まだまだ課題はたくさんあります。

 

今年の9月には、関東労災病院の横にある踏切の下をくぐりぬけられる道路が整備される予定です。計画ができてから実に70年ぶりの実現です。その後の計画では、そこから法政大学川崎総合グラウンドまで、道を通すことになっています。しかし、住宅地なので、なかなか遅々として計画は前に進んでいません。

 

武蔵小杉は、電車という面ではとても便利になりましたが、市内を自動車で移動するには、まだまだ未整備です。武蔵小杉から麻生区に行くには、1時間ほどもかかってしまいます。ですから、予算を組んでインフラを整備しないといけないと思っています。

 

日本は予算を投資してインフラを整備するにしたがって、経済成長を遂げています。しかし、平成になってインフラへの投資を減らしていくと、それに伴って経済成長も止まってしまいました。一方で中国は、インフラにどんどん投資していますから、経済が目覚ましく発展しています。

 

一概には言えませんが、川崎市も昭和47年頃から「投資的経費」としてインフラ投資にかける予算にかなりの額を割いてきましたが、その当時に比べると現在は、インフラ投資にかける割合が、3分の1程度にまで落ちています。今一度、橋や道路など、インフラへの投資をしっかりとしていかなければと思っています。

―読者へのメッセージをお願いします

 

末永:区民のみなさんが末永く住み続けていきたいと思える街にするために、街づくりへの投資のおカネをより充実させていくこと、保育、子育て、教育、そして介護までしっかりとおカネをかけて子供を産み育てやすく、老後も安心できる街にしていきたいですね。

末永直ホームページhttp://suenagayuke.com/

この記事のライター

現代社会は、地縁、血縁、社縁(職場の縁)が希薄になり、個々人がバラバラに分断され、多くの人が孤立するようになりました。そんな社会を修復するにはどうすればいいか。その一つの解が、新たなコミュニティを創造することだと思っています。

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