―「みどりなくらし」は、どういう経緯で結成されましたか
本江:私と「みどりなくらし」の理事長をしている堀由夏がもともと生協パルシステム神奈川という生活協同組合の理事をしていていましたが、2人そろって役員の任期満了で2015年6月に退任したのをきっかけに、2015年の7月に「みどりなくらし」を立ち上げました。
―運営メンバーはどういった方々ですか
本江:たとえば、私たちが開催している農作業体験に参加した方が気に入っていただき、私たちの理念などにも共感して、運営メンバーになっていただいたりするなど、もともと講座などの参加者だった方が運営メンバーになって参加から参画していただいたケースなどがあります。
つくってたべよう♬…季節に合わせて、親子で手作りの時間を大切に!
■「みどりなひろば」でお母さん同士が知り合うきっかけをつくる
―メインの活動は「みどりなひろば」でしょうか
本江:そうですね。一般的には「親子ひろば」というものですが、それがメインの事業になっています。私たちの「NAYA enjoyspace」では毎週水曜日に開催していますが、出入り自由で、お買い物の帰りにちょっと寄ったり、ここで遊んでいたりだとかがメインの活動になります。
地域子育て支援センターの運営も受託していて、川崎市の委託事業として「おおと」や「しんまるこ」、「ひらま」で、同様な親子ひろばを開催して親子の居場所を提供しています。
―ちくちくの日とかこねこねの日とかありますね
本江:自由に来ていいですよと言っても、何かきっかけがないと来づらいので、ちくちくの日では、小物づくりを親子で一緒に作ったり、こねこねの日では、簡単なおやつや天然酵母パンづくりをしたりしています。※現在は「つくってたべよう♬」を第4水曜日に開催
手を動かしながら、世間話から始まって「うちの子が離乳食を食べないんだけど」とか「1歳になったけど、まだ歩かない」など、ご自身の悩みを打ち明けてもらっています。
地域子育て支援センターでも同様で、ベビーマッサージとか絵本の読み聞かせ、音楽遊びをするきっかけで、初めて来訪した方が、こういう場所でこういう人たちがいるんだなと知ってもらって、そこから「また遊びに来ようかな」と思っていただいています。
■コロナ禍で生まれた子育てサークル「みどりっこ」
―コロナ禍ではお母さん方の行き場所がなくなって困ったそうですね
本江:私たちが運営している地域子育て支援センターもコロナ禍で一時期休業になってしまいました。そこで「NAYA」の近くにある地域子育て支援センターおおとの利用者が、「NAYA」を貸してくれないかと話に来られて、子育てサークル「みどりっこ」が始まりました。
ちょっとでもいいから、みんなに会いたいというご希望があって、このサークルが立ち上がりました。お母さんたちが自分の抱えている不安を払しょくするために、お母さん同士で話をすることで、気持ちが和らいだり、心配なことをみなさんで共有したりされていました。
―昔ならば、公園デビューなど自力でママ友を開拓していましたが、いまでは、行政の方やNPOの方がそういった出会いの場を提供していますね
本江:特に中原区は転入者がとても多い地域なので、初めて来た土地でお友達づくりというのは、すごくハードルが高いのです。そこで行政や私たちのようなNPOがきっかけをつくって、それを目当てに来ていただいて、同じような境遇で年齢が近い方やご近所だったりなど、共通のものが見つかると、とても安心されるようです。
一方、地域子育て支援センターのスタッフは保育士の資格があったり、子育て経験者だったり、子育て支援者の養成講座を受けていたりするので、知識もありますし、自分たちが子育てを経験した中で、子育てしていた時に同じような悩みをしていたなと思い出して、アドバイスをします。
地域子育て支援センターしんまるこ…親子の時間をスタッフが見守っています
■「みどりなカフェ」ではダブルケアの問題も話し合う
―「お外でみどりなひろば」というのも開いていますね
本江:上小田中西公園がNAYAのすぐ近くにあるので、毎月1回開催しています。これもコロナ禍で室内に入ることをためらっている親御さんたちが、公園ならば感染しにくいし、外で遊んだほうがお母さん方もリフレッシュできるということで、中原区子育て支援推進事業という中原区の事業の一つとしてやっています。
―お母さん方が安心できる子育て環境が大事ですね
本江:川崎市は子どもが多いので、2人目、3人目を出産される方も多いですが、お友達が近くにいたり、自分の子育てを一緒に手伝ってくれる方がいると、安心して産めるようです。お母さんがひとりで育児をするのは無理があって、周囲の方が手を差し伸べてくれることが大事ですね。
―「みどりなカフェ」も開いていますね
本江:「みどりなカフェ」は子育て支援の活動だけではなく、育児をしている方々が同時に親の介護をしているダブルケアなどを話し合う場になっています。今、女性の出産年齢があがっていて、初産がだいたい30代なのですが、そうすると親の介護も重なってきます。
また、「暮らしの保健室」を3ヶ月に1回、医師の西智弘さんが代表理事を務める一般社団法人プラスケアと共催で開催しています。病院に行くほどではないけれど、心配事を医師や看護師の方に相談したい方に来ていただいています。そのほかに認知症サポーター養成講座なども開いています。
お外でみどりなひろば…近所の公園でお外遊び♬
■農作業体験など環境問題を身近に感じてもらう
―環境問題に関する様々な講座を開かれていますね
本江:「森のせんせい」では、小田原市の小学生に森林保全の教育をしています。また野外活動として、農作業体験や自然観察会なども開催しています。農作業体験では、生田緑地の近くにある農園を年間でお借りして、夏は枝豆を、冬は大根を種から育てて、収穫するまでのお世話を連続でやっています。
いわゆるサツマイモ堀りなどはよくありますが、それは、掘るだけの作業で終わりです。それだけではなくて、育てている期間には、雑草もたくさん生えていて、雑草を放置していると作物が大きく育たないということや、間引きをしたりして栽培することでおいしい枝豆や大根ができるという体験をしてもらっています。
環境問題というのはすごく難しくて、その難しい話を遊びに来てくれた親子さんに延々と話しても敬遠されてしまいます。そこで、たとえば、森林の間伐の話でも、おおきな木を育てないとゲリラ豪雨が襲ってきたときに土砂崩れで山が崩れてしまうといったわかりやすい話で、間伐が森林保全ためにいかに大切かを話します。
また、地球温暖化に関しても「なんで12月になってもこんなにあったかい日があるのだろう」といった身近なことから、そもそもその原因を作ったのは人間だということをお子さんにわかりやすく伝えるために、イラストなどを利用して説明をします。
さらに、食べものでも、川崎市は意外と農地が多いので、川崎市の野菜を食べることによって無駄なエネルギー…遠い九州や北海道から運んでくるエネルギー…を使わないことを心がけてほしいなどという話もしています。
―読者へのメッセージをお願いします
本江:私たちの事業に限らず、どうしたら安心して子どもを育てられるかということを考えている方はすごくたくさんいらっしゃいますし、実は色々なところに親子で行ける場所があるので、ぜひ、そういう場所に足を運んで利用していただきたいと思います。
悩みというほどのものではなくても、世間話でもいいので、気軽にスタッフや同じ参加者の方などに話しかけていただいて、ストレスを発散していただきたいと思います。まずは、一歩ではなく半歩踏み出してください!
「みどりなくらし」ホームページ:https://midorinakurashi.jimdofree.com/
現代社会は、地縁、血縁、社縁(職場の縁)が希薄になり、個々人がバラバラに分断され、多くの人が孤立するようになりました。そんな社会を修復するにはどうすればいいか。その一つの解が、新たなコミュニティを創造することだと思っています。