■「ひとり親」問題はトータルなサポートが必要
―小児医療費無償化の拡大とは
川島:小児医療費の無償化を高校3年まで拡大したいと思っています。川崎市単独で始めるには、難しい課題ではありますが、議会として予算を要望して対応していきたいと思っています。国と連携して、川崎市としても取り組みやすい環境にはなっていますので、実現させたいと思っています。
―専業主婦も保育園を利用できるようにしたいそうですね
川島:保育園は共稼ぎをしているご家庭への支援が前提ですが、専業主婦も子育てはしているわけです。子育ての環境づくりとして、モデル事業を去年からスタートさせている自治体があります。川崎市はこれからですが、これも国と連動した動きなので、実現の可能性は高いですね。
この政策には、児童虐待予防の側面もあります。子育てをしているとどうしても孤立化してしまいます。専業婦のご家庭ほど、見守ってくれる外の目がありません。そこで、そういう人たちを支援できないかという発想から、専業主婦でも保育園を利用できるようにしようという政策です。
―不登校特例校の整備も課題に挙げています
川島:今、不登校のお子さんも学区の学校で、他の生徒とは違う教室に通っているケースもありますが、不登校特例校ならば通えるというお子さんも多くいます。
全国の自治体では、特定の学校において教育課程の基準によらずに、不登校の子どもへの特別の教育課程を編成することができる不登校特例校の設置が進んでいます。国の施策としても、学校を変えても学校の単位などが変わらず、普通に卒業できる措置です。
この不登校特例校を政令市に一つは作っていこうということで、すでに多くの自治体が取り組んでいます。川崎市はその取り組みが遅れていますが、検討の段階には入っていて、この政策も実現の可能性は高いです。
―ひとり親問題についてはどう取り組みますか
川島:ひとり親の世帯も就労の問題から子育てや住まいの問題があって、トータルにサポートしていく環境が非常に大事です。とりわけ就労ですが、自立できる環境をどう構築するかが重要な課題です。
さらに住まいについても、家賃の負担が重いという方も多くいらっしゃるので、市営住宅でひとり親を優遇するなど、課題解消のための提言をしています。ひとり親の問題は、就労や子育て、住まいなど様々な問題が絡み合っていますから、行政としても、多岐にわたる取り組みが必要です。
街に密着して課題をすいあげる
■高齢者にとっても住居の確保は大事
―一方、希望ある「幸齢社会」の実現を政策として掲げていらっしゃいますね
川島:孤立した年配の方へは、見守りが大事だということで、新聞の配布時や、宅急便の受け渡しの時など、様々な事業者と協定を結んで孤立死がないように見守りの体制を作っていこうとしています。
また、何かあったときのために「高齢者等緊急通報システム」が川崎市にはあって、携帯できるような形で、ボタンを押したら通報できるシステムがあります。
高齢者にとっても、住まいが非常に大事だということで、国の施策として、住宅セーフティネット制度が2017年10月からスタートしています。
これは、住宅確保要配慮者(低額所得者、被災者、高齢者、障害者、子育て世帯等)で、住居の確保にお困りの方が入居を断られない民間賃貸住宅を確保するという取り組みです。
さらに、市営住宅並みの家賃で暮らせるような補助を出すという仕組みですが、川崎市はこの制度の導入が進んでいません。特に中原区は家賃が高いので、家賃補助がでれば、ずいぶん楽になります。
■川崎市らしい「地域包括ケアシステム」とは
―川崎市らしい「地域包括ケアシステム」の構築を目指していますね
川島:高齢者をはじめ、障害者、子ども、子育て中の親などに加えて、現時点でケアを必要としない方々を含めた「全ての地域住民」を対象に、医療・介護・予防・住まい・生活支援などを、切れ目なく受けられる仕組みである「地域包括ケアシステム」の構築を長らく続けてきています。
そういうシステムの中心となる組織をどうするのかということで、川崎市がつくったのが、地域見守り支援センターです。
これは区役所の中にある部署ですが、高齢者だけではなく、子育て世代や障がい者などの相談をまとめている窓口で、川崎市に長く住んでいただけるための取り組みの窓口になっています。
川崎市は住民が散らばって住んでいる地方のイメージではなくて、都市部の中でもひときわ、人口が密集している地域なので、密集地帯としてのケアが必要になってきます。
ですから、施設が足りないとか、福祉・介護などの担い手が不足しているなど、そういう部分をどうカバーしていくかということに注力すべきだと思っています。
特に中原区は大きな病院がいくつもあって、そういう大きな拠点病院と地域のクリニックの皆さんが連携していくネットワークを充実させていくために提言させていただいています。
―こども文化センターや老人いこいの家など地域拠点を地域包括ケアシステムに連動し、多世代交流を促進させるとは
川島:今後、それぞれの施設を複合型にして、子どもしか使えない、老人しか使えないではなく、多世代の方がそこに集いあえる場所にしていくことが重要です。そこは行政も同じ考え方ですから、これから再編していくことになっています。
今まで、子どもや老人しかいなかった施設に、親御さんや地域の若者などが集えるような地域の拠点になっていくと、違った景色が見えると思っています。また、そういった施設が、区民の孤立化を防ぐ環境にもなってくれるのではないかと考えています。
人口が急増し大きくなった中原区の課題に取り組む
■「住みたい街から住み続けたい街へ」がテーマ
―誰ひとり取り残さない社会の構築という政策も掲げられています
川島:SDGsの一つでもありますが、障がい者やヤングケアラーを支援し、LGBTカップルのファミリーシップ制度の導入を後押ししています。
LGBTカップルのファミリー制度では、国レベルで法案はできましたが、なかなか前に進みません。実際、私もLGBTの方々にお話を聞いていますが、困っていることなどが少しでも解消できるように、川崎市に働きかけています。
本来、大人が担うと想定されている家事や家族の世話などを日常的に行っている子どもであるヤングケアラーの問題に関しては、今、一番対応が遅れている施策だと思います。
この問題の難しさは、本人がヤングケアラーだと自覚していないケースが多々あることです。一方で、そういう子どもを見つけたらどこに連絡すればいいのかがわからないのが現状です。役所には、まだヤングケアラーに関する窓口や担当部署がありません。早急に取り組むべき課題です。
―中原区をどういう街にしたいですか
川島:「住みたい街から住み続けたい街へ」というのをテーマにしています。初当選が2011年の東日本大震災直後の選挙でした。また、私は防災士でもあるので、命を守ることが一番大事だと考え、防災力の高い街にしたいということが根底にあります。
住みたい街として選ばれた中原区は、どんどん人口が増えてきて課題が大きくなってきていますが、これからは新しく住んだ方もこれまでも住んでいらっしゃる方も生涯、住み続けたいと思っていただける街づくりをするためにはどうしたらいいのか、ということを常に考えています。
川島まさひろ氏ホームページ:https://www.komei.or.jp/km/kawasaki-kawashima-masahiro/
現代社会は、地縁、血縁、社縁(職場の縁)が希薄になり、個々人がバラバラに分断され、多くの人が孤立するようになりました。そんな社会を修復するにはどうすればいいか。その一つの解が、新たなコミュニティを創造することだと思っています。