多拠点コミュニティ「ADDress」という新しい暮らし方

多拠点コミュニティ「ADDress」という新しい暮らし方

多拠点コミュニティを提唱するADDress。その武蔵新城A邸の家守を務めるのが横田寛さん(写真・左)と広武真季さん(写真・右)。家守というのは、いわば管理人ですが、ごはん会などを催して地域との交流も盛んだとか。利用目的は様々ですが、ADDressならではの絶妙な距離感が魅力だそうです。


「家守」として会員と地域の人をつなぐ

―ADDressの家守になったきっかけは何ですか

横田:僕はユーザーとしてADDressを使っていました。コロナ禍が始まって、1年ほどたったころなのですが、当時、埼玉の実家に戻っていて、「ここにいちゃいけない。早く家を出ないと」という思いに駆られました。そこで、全国を転々とする旅を始めました。

 

仕事はリモートでしていたのですが、中でも、武蔵新城はとても暮らしやすいと気に入りました。そこで、本気で武蔵新城に定住することを考えていたのですが、前任の家守さんが、後任を探しているということを会員さんから伝え聞いて、手を挙げたわけです。

広武:私は横田さんが家守をやりたいっていうことを聞いたのですが、その当時、横田さんが月の半分を仕事で大分県の別府に行かなければならないということになったので、その半月は私が横田さんの代わりに家守をやるということにしました。

―ところで家守というのは何をするんですか

横田:大きく言うと拠点運営とコミュニケーションという2つの業務があります。1つ目の拠点運営では、リネンの管理があります。基本的にセルフ対応なので、自らベッドメイキングをして、使い終わったら戻してもらいます。家守はリネンを綺麗に整えて、次の会員がベッドメイキングをしやすいように指定の位置に配置します。会員がきちんと現状維持をした状態で出発しているか、個室や共用部のチェックもします。

 

2つ目のコミュニケーションとしては、僕らは特に地元の武蔵新城とのつながりが強いので、ごはん会などを催して、地元・武蔵新城の方と会員さんをつなぐということをしています。

 

会員の方は、その地域の方と交流すると満足度が高いのです。ローカル感というか、そこでしか体験できないようなことができると喜ばれます。街の人もADDressには面白い人がいるとコミュニケーションを楽しんでくれます。

家守は会員さんとの日常的なコミュニケーションも大事にする

利用目的は観光やお試し移住など十人十色

―ところで多拠点コミュニティとはどういうものなのでしょうか

横田:アドレスホッパーと呼ばれている住まいを1箇所に固定せず、ADDressを使って全国を転々としている人たちがいます。一方で、固定の家はあるものの週末だけ、ちょっとした旅行として使う人もいます。この武蔵新城の拠点での利用目的で一番多いのは、東京と横浜へのアクセスがとてもいいので、地方から東京に仕事で出てきたときに利用する方が多いですね。

 

ちなみに、ADDressと言うと「20代や30代の若い人が使うものなんでしょ?」とご質問を受けることも多いですが、40代以降の方や定年退職された方なども来ています。

 

ただ、拠点によって利用目的は違っていて、地方では観光目的だったり、移住先を探している人が暮らしを体験するために利用したり、独り暮らし体験といって、いままで独り暮らしをしたことがないので、本当にできるのかどうかを試される方もいますね。また。ワーケーションとして利用する方もいます。

 

広武:さらに、人との交流が目的の方もいます。また、家守で決めているという方もいます。この家守さんに会ってみたいというニーズがあって、「ここの家守さんはいいよという口コミがあったので、会いに来ました」という方もいます。

 

横田ADDressはサブスク方式をとっていますが、最も手頃なプランだと、月額2泊分で9,800円と安いですね。拠点にもよりますが、同伴者が無料だったりします。

ADDressならではの独特で絶妙な距離感

―多拠点コミュニティの魅力は何でしょうか

横田:常に新しいものに触れ続けられるというのが、一番の価値だと思っています。自分が知らない場所に行くと、すべて新しい体験になります。新しい場所、新しい人、新しい体験ができます。その日常から離れた非日常感というのが、とても新鮮で刺激がありますし、めちゃくちゃ楽しいです。

 

人に関しても、自分がふだん出会わない人と出会えます。ふつう仕事をしていると、自分の職場の人としか話さないですが、ここにいると、絶対出会わないような人たちとたまたま出会えることがとても面白いと感じています。

 

広武:本当にいろんな人が利用しているので、見ていて面白いなと思っています。本業で福祉の仕事をしているからかもしれませんが、他人の生活を見ていることが楽しいんです。人間観察が面白い。


また、一緒に遊ぶことのできる友達が増えるのもいいですね。私たちは、「今度は小豆島で会おうね!」とか、「新島に一緒に行こうよ」など、フットワーク軽く全国で一緒に遊んだり、生活を共にしたりする友達が出来ました。

 

自分たちの価値観で、深すぎず、浅すぎず、なんともいえない絶妙な感覚の距離感の人たちとつながれるのが魅力的ですね。

 

横田:距離感のことでいうと、ADDressって「じゃ、またね!」という感じでお別れをするんです。またどっかで会うだろうなという感じですね。そういった緩いつながりがいいですね。ADDressという独特なコミュニティだからこその距離感があります。

新島で会員さんと遊ぶ

「ただいま!」と言える場所が増えるのが嬉しい

―そもそもADDressの出発点はなんだったのでしょうか

横田サービス開始当初から「全国創生」をうたっているので、全国の空き家を利活用していこうというが出発点ですね。

 

広武:現在は「多拠点コミュニティ」に比重を置いています。多拠点でいろんなところに住めたらいいねというサービスから、いろんなところに自分の居場所があるコミュニティのサービスだよというふうに発展したのです。ですから、地域とつながっていくといった形で、自分の第3の居場所といったものをつくっていこうとしています。

 

横田:旅をしていると、とても愛着が持てる拠点があって、僕的には「ただいま!」と言える場所が増えている感覚で、それがとても嬉しくて、日本にそういう場所が何カ所もあるのは、とても幸せだなと思っています。

―地域との交流がとても盛んですね

横田:この武蔵新城A邸は、地域交流に関してはとても力を入れていますね。全国のADDressの中でもトップクラスに近いのではないでしょうか。気がついたら、かなり力を入れているなと。地域との交流でごはん会をやりたいよねといったことから始まっています。

 

ポイントなのは我々も楽しんでやっていることでしょうか。仕事としてやらなくてはということではなく、単純に武蔵新城で友達が増えていって、楽しいから集まろう!ということで、もう2年ほど、月に一回は、地域の方を招いてごはん会をしていますね。

 

広武:この人とこの人を呼んでつなげたら面白そうだなとか、今回はとても若い人たちの集まりにしてみようとか、個人事業主でやっている人がいるから、デザイナーさんとつなげば、仕事になるかなとコーディネートしています。

月に一度は地域の方を招いてごはん会を催す

―今後の抱負はありますか

広武:野望としては、私の友達を武蔵新城にいっぱい呼んで住んでもらうことです。この間も近所の友達と平日にカラオケに行ったのですが、みんな徒歩10分ぐらいのところに住んでいるので、ぱっと集まってぱっと帰ることができました。大人になっても小学生のようにご近所友達と遊べるのがいいなと思っています。

 

横田:今年の抱負としては、月に1回は旅に行くことにしていて、先月は長崎の五島列島に行きました。先ほども言いましたが、僕は新しさに触れ続けることをしないといけない身体で、じっとしていられないのです。()

―読者へのメッセージをお願いします

横田ADDress自体、知らない方が多いと思うので、「武蔵新城にこんな場所があるよ」というのを知ってもらいたいですね。気軽に遊びに来てほしいなと思います。気に入ってもらえたら、ADDressを使ってみてほしいと思います。使ってみれば、めちゃくちゃ楽しいですよ!

ADDressホームページ

https://address.love/?utm_source=u-referral&utm_medium=referral&utm_campaign=6a7d988038

※こちらのURLからご登録いただくと、紹介者特典が受け取れます

 

横田さん・広武さんとの出会いの場川崎市中原区100人カイギ

この記事のライター

現代社会は、地縁、血縁、社縁(職場の縁)が希薄になり、個々人がバラバラに分断され、多くの人が孤立するようになりました。そんな社会を修復するにはどうすればいいか。その一つの解が、新たなコミュニティを創造することだと思っています。

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