障がい者の就労を支援するコミュニティカフェ「メサ・グランデ」

障がい者の就労を支援するコミュニティカフェ「メサ・グランデ」

武蔵新城駅から徒歩2分、「メサ・グランデ」という地域の方々が利用するコミュニティカフェがあります。木目を基調とした店内は、天井が高く落ちつきのある空間です。一方で、このカフェは就労継続支援B型事業所として、障がい者の就労を支援する場でもあります。どんなことをしているのか、施設長の前田瑞穂さんにお話を伺いました。


食と農を通じての地域コミュニティづくりを目指す

―「メサ・グランデ」はどういう経緯で誕生したのですか

前田:「メサ・グランデ」の運営母体であるNPO法人「ぐらすかわさき」(以下、「ぐらすかわさき」)は2001年に設立され、市民が集い、交流する場をつくり、講座・交流会やイベントなどを開催してきました。それは、川崎市の市民の皆さんが困っていることを、行政の動きを待つのではなく、市民自身の力で解決して、みんなが暮らしやすいような街にしていきたいという目標があったからです。

 

そういった活動をしてきた結果、みんなで話ができる場所が必要ではないかということで、そのスペースを確保することができました。

そこで、これだけの場所を確保できたのだから、食事も出した方が良いのではとか、農家さんの支援活動もしていたので、近隣農家の野菜を販売する場にできたらということで、
20124月に「メサ・グランデ」が誕生しました。食と農を通じての地域コミュニティづくり、誰もが暮らしやすい地域社会づくりを目指しています。

お子様連れも多く利用するコミュニティカフェ「メサ・グランデ」

誰もが集える場であり、障がい者の働くチャンスの場でもある

―就労継続支援B型事業所でもありますが、どういったものですか

前田:障がいのある方などが一般企業に就職することが難しい場合に、作業などの就労訓練を通して、働くチャンスを提供する場です。作業された方には、工賃という形で作業料をお渡ししています。


「ぐらすかわさき」では、これまで様々な事業を通じて市民活動支援を行ってきましたが、障がいの有無に関わらず、誰もがいきいきと暮らし働ける地域社会の創出を目指すことになり、2016年に障がいのある方の居場所となる「地域活動支援センター メサ・グランデ」の運営を開始しました。

 

はじめのうちは、利用者が求めている過ごし方を尊重していたのですが、年を重ねるにつれ、カフェ作業をやりたいという方がすごく増えてきたんですね。それならばと、2023年に就労継続支援B型事業所(以下、就労B型事業所)へと移行したんです。

―具体的にはどういった仕事をされるのですか

前田:メインは、「メサ・グランデ」のキッチンでの作業になります。最後の仕上げのようなところは職員がやっていますが、下ごしらえで玉ねぎを刻んだり、じゃが芋の皮をむいたり、野菜を洗ったり、その人に合わせた作業をしてもらっています。

 

料理をあまりやったことがないという方には、玉ねぎをむいたり、ニンニクの皮をむいたりすることをお願いします。もうちょっとできる人には、粗みじん切りをしてもらって、細かくみじん切りができる人には、粗みじん切りをさらに細かくしてもらっています。みんなで、自分ができること、得意なことを分担してやっています。

 

また、お弁当の販売もしているので、弁当箱におかずを詰めたりもしています。一方で、来店するお客様にお水を出したりするなど接客もしてもらいます。接客などが苦手な方もいらっしゃるので、人前に出たくないと思っている人は、その人の得意なことをやっていただいています。

メインの作業はキッチンでの下ごしらえ

―軽作業などもありますね

前田:荷札にゴムを通して結ぶなどの細かい作業などを受注しています。また、近隣のラーメン屋さんからは、大きな袋にどっさり入っているフライドオニオンや刻み海苔を、テイクアウト用の小さなパックに詰め替える作業のオーダーもあります。

利用したい方は「受給者証」の申請を

―どんな人が事業所を利用できるのですか

前田:わりと幅広くて、障害者手帳を持っていればほとんどの方が利用できます。家にひきこもりがちで、外になかなか出られないなど、障害者手帳を持っていなくても、区役所で福祉の支援が受けられる「受給者証」を申請し、発行してもらえれば、事業所に通うことができます。

―利用するのに費用はかかるのでしょうか

前田:原則として、ご本人の負担はありません。ただ、こちらで昼食を利用される場合は、300円の実費をいただいています。

―事業所で働いた工賃は平均するとどれぐらいになりますか

前田2023年度は月平均6,276円になりました。また1カ月間、無遅刻、無早退、無欠勤の場合は皆勤手当として500円が上乗せされます。

地域食堂「めさみーる+」は誰でも参加が可能

―地域食堂「めさみーる+(プラス)」も開催していますね

前田:世間ではまだそれほど子ども食堂が認知されていなかった頃、子どもの貧困をテーマに地域でできることとして、子ども食堂のノウハウを持っていたNPO法人セカンドリーグ神奈川さんの協力のもと、誰でも参加できる地域食堂「めさみーる+」を2016年にスタートさせました。お子さんと65歳以上の方は100円、大人は300円、いただいています。

 

1回の開催日には、お子さん同士、仕事が忙しいお父さんお母さんとそのお子さん、一人暮らしの方、高齢の方など、たくさんの地域の方々が集まります。

 

その日の夕飯作りをお休みすることで、親子一緒の時間を過ごせたり、身近なご近所さんと顔を合わせて和やかに楽しく過ごせたり、ゆるくつながってもらえたらなという思いで運営しています。

親子や高齢者の方、一人暮らしの方など多様な方々が集う「めさみーる+」

「メサ・グランデ」のこれから

―今後の展望などはありますか

前田:まずは昨年スタートした就労B型事業所を、より多くの方に知っていただきたいと思っています。

―読者の方へのメッセージをお願いします

前田:「メサ・グランデ」は、全国的にも数少ない、カフェ型の就労B型事業所です。店先には近隣の農家さんから直送された野菜がならび、カフェでは、野菜をたっぷりと使った、素材の味を活かした手作りメニューが楽しめます。どうぞ、気軽にお立ち寄りください。

 

と同時に、一般就労で働くことが難しい、働きたいと思っていてもきっかけがつかめない、などの悩みをお持ちの方は、まずは気軽に相談していただけたらと思います。

 

「メサ・グランデ」ホームページhttps://mesa-grande.jimdofree.com/

この記事のライター

現代社会は、地縁、血縁、社縁(職場の縁)が希薄になり、個々人がバラバラに分断され、多くの人が孤立するようになりました。そんな社会を修復するにはどうすればいいか。その一つの解が、新たなコミュニティを創造することだと思っています。

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