■地域と世代間の交流を目指す
―In Unity実行委員会はどんな経緯・目的で結成されましたか
小川:In Unity実行委員会が結成された2000年当時、アマチュアのミュージシャンが発表する場を区民の手でつくるというのが、中原区役所の事業としてあって、地域の方がつくる区民音楽祭的なイベントを立ち上げようという動きがあったそうです。区役所の事業担当の方を中心に近隣の若い方などにお声がけをして、実行委員会のメンバーを募ったのが始まりです。
そこでアマチュアミュージシャンやダンスチームが、ふだんの練習の成果を発表できる場をということで、年一回の音楽・ダンスイベントを開催しようということになりました。
その後、街も発展し、中原区は東京の近隣エリアなので、単純に出演する機会だけでいうと、様々なライブハウスなどもあります。ですから、地域間の交流や新しく引っ越してきた若い区民の方と、もともと中原区にいらっしゃる年配の方との交流など、地域と世代間の交流を目指しています。
一貫してアマチュアであることを前提に、気軽に応募できて、選考を経てステージに立てます。そのステージでの音響や照明はちゃんとプロのエンジニアの方にサポートしてもらっています。例年、応募が倍率的には3倍から5倍くらいきます。
初めて参加するグループも当然あるのですが、無料で参加できるイベントで、また入場無料のイベントなのに、これだけクオリティの高い音響や照明でできるということに、皆さん感激してもらっています。
私を含めてスタッフもアマチュアの人がボランティアで参加していて、運営も手作りでやってきました。温かみのあるイベントにするため、出演者もスタッフと一緒にイベント当日の会場の掲示物を一緒に作ってみたり、運営スタッフと一緒に会場の整理をやってみたり。そういうことを含めて、みんなで一緒につくるイベントというのが、In Unityの大きな特徴です。
多くのボランティアによって支えられている
■年間を通じメインイベント以外にも小規模イベントを開催
―運営メンバーは何人で、どんな人たちですか
小川:運営メンバーは現在6人です。ほとんどの人が音楽経験があったり、イベント経験があった方、あるいはもともとアマチュアミュージシャンで、自分でライブハウスなどで演奏される方などです。唯一、音楽やダンスにまったく無関係でイベント運営のこともまるで知らなかったのが、私です。(笑)
―運営メンバーの主な役割は何でしょうか
小川:In Unityのメインイベントは毎年1月とか2月に開催しますが、そのイベントにむけてのPRイベントとしてミニライブ的なものを数回開催していて、1年を通じて、出演機会の提供や音楽やダンスを通じた地域の盛り上げなど、色々なイベントの企画をしています。
「次はこういうコンセプトで、こういうイベントをやろう」と話し合い、そのイベントに向けて、どういうグループをブッキングすればいいのか企画を立てます。また、メインイベントの規模が毎年、出演者が15組から20組あって、しかも2日がかりでやるようなイベントなので、出演者の選考がかなり大変です。
8、9月ごろに募集をかけて、10月ごろ選考をして、11月ぐらいに出演者の方に説明会を開くという流れがあるのですが、ここ最近は、それと並行して学生バンドオーディションという企画もあり、これもまた募集をかけて選考をしています。
学生バンドオーディションを始めたきっかけは、コロナ禍です。この企画がスタートしたのが、2021年です。コロナ禍で学生さんが部活もできない状況なので、音楽事業という特性を生かして、学生さんに向けての企画ができないだろうかということで始めました。
学生バンドの本格的なスタジオレコーディング
■学生バンドの最優秀グループはCD制作と販売も
―選考を経て出演者を決めるそうですが、どういう選考をされていますか
小川:まず募集期間に募集要項をホームページでご案内して、それを見た方が自分たちの生演奏の動画を所定の応募フォームにアップロードしていただき、それぞれのアーティストさんの中原区とのつながりなど色々な情報を入れていただきます。
それを私たち運営メンバー+中原区役所のIn Unity担当の事務局の方が見て、イベントの趣旨に合うようなジャンルや方向性か、そもそもパフォーマンスのクオリティが高いかどうかを基準に基づいて点数化しセレクトしていきます。
―学生バンドオーディションの選考も同様ですか
小川:こちらは、学生世代のバンドであること、川崎市にゆかりのある人が必ず最低一人は含まれていること、さらにオリジナル楽曲であることなどが応募要件です。最優秀グループはイベント出場権を得るのと同時に音楽CDを制作してタワーレコードで販売もします。
学生バンドオーディションをやっていると、若者たちがこのオーディションを経験することで、とても成長することを、毎年、非常に感じることが多いです。大変ではありますが、やっていてすごく楽しいし、私のようなおじさんにとっては、他では得られない感動を受けるときがあります。(笑)
華やかなステージが繰り広げられる
■「もう一度出演してみたいな」というイベントを常に目指す
―活動の中で一番大変なことは何でしょうか
小川:イベントをつくり上げるには、かなりエネルギーがいりますし、時間もとられます。それをボランティアとして本業と両立させて、少ない人数でやりぬいていくことは、かなりの負担にはなります。それが大変ではありますが、その分、本番が無事に終わったときには、非常に喜びが大きいですし、達成感があります。
―25年もの長きにわたって継続できた秘訣は
小川:出演するだけではなくて、出演したことで他のグループとの交流が生まれたり、スタッフと交流が生まれたりとか、出演してよかったな、楽しかったな、こんな本格的なステージで演奏できるなら、もう一度、出演してみたいなと思えるようなイベントを常に目指しているので、それを地道に繰り返しているからでしょう。
あとは、年に1回だけのイベントだと、どうしても関係性が薄くなりがちですので、ミニライブ的なものを年に数回やるなかで、過去の出演者に定期的にお声がけをして、「今度はこういうコンセプトで、こういう場所でイベントをやるので、ぜひ参加しませんか」と、こちらからもこまめにご案内したりして、イベントとしての継続性、常につながりを感じられるような仕組みを極力、心がけています。
―読者へのメッセージをお願いします
小川:今、世の中全般に文化事業に対する風当たりが強いですね。たとえば、文化的予算を削ろうよといったことが、どこの自治体でも普通になっています。In Unityも中原区役所と二人三脚で展開していますが、中原区在住の方でもIn Unityを意外と知らない人も多いです。もう少し知名度を上げて、In
Unityが中原区にとってなくてはならないイベントになるまで、昇華しなければいけないと思っています。
In Unityについてちょっとでも聞いたり、目にしたりした方は、一度、会場に足を運んでいただいてほしいと思っています。市民の手作りのイベントでもこれだけの楽しいイベントがあるんだということを会場で体感していただきたいと思います。
今回は、土・日と二日間あり、どの時間帯でも楽しめるようになっていますので、すこしでもスケジュールの都合がつく方には、ぜひ来てほしいと思っています。
【In Unity2024】
開催日:2月24日(土)、25日(日)
会場:中原区役所 特設ステージ
詳細;In Unity オフィシャルサイト:https://inunity.jp/page-2195
現代社会は、地縁、血縁、社縁(職場の縁)が希薄になり、個々人がバラバラに分断され、多くの人が孤立するようになりました。そんな社会を修復するにはどうすればいいか。その一つの解が、新たなコミュニティを創造することだと思っています。