区民が手作りする音楽・ダンスイベント「In Unity」とは

区民が手作りする音楽・ダンスイベント「In Unity」とは

In Unity(インユニティ、通称インユニ)は、ボランティアの区民が運営している音楽・ダンスイベントですが、音響、照明などはプロがサポートするので、とてもクオリティの高いステージになっています。今年で25周年を迎えますが、その長続きの秘訣や魅力などを実行委員会委員長の小川竜児さんに伺いました。


地域と世代間の交流を目指す

―In Unity実行委員会はどんな経緯・目的で結成されましたか

小川In Unity実行委員会が結成された2000年当時、アマチュアのミュージシャンが発表する場を区民の手でつくるというのが、中原区役所の事業としてあって、地域の方がつくる区民音楽祭的なイベントを立ち上げようという動きがあったそうです。区役所の事業担当の方を中心に近隣の若い方などにお声がけをして、実行委員会のメンバーを募ったのが始まりです。

 

そこでアマチュアミュージシャンやダンスチームが、ふだんの練習の成果を発表できる場をということで、年一回の音楽・ダンスイベントを開催しようということになりました。

その後、街も発展し、中原区は東京の近隣エリアなので、単純に出演する機会だけでいうと、様々なライブハウスなどもあります。ですから、地域間の交流や新しく引っ越してきた若い区民の方と、もともと中原区にいらっしゃる年配の方との交流など、地域と世代間の交流を目指しています。

 

一貫してアマチュアであることを前提に、気軽に応募できて、選考を経てステージに立てます。そのステージでの音響や照明はちゃんとプロのエンジニアの方にサポートしてもらっています。例年、応募が倍率的には3倍から5倍くらいきます。

初めて参加するグループも当然あるのですが、無料で参加できるイベントで、また入場無料のイベントなのに、これだけクオリティの高い音響や照明でできるということに、皆さん感激してもらっています。

 

私を含めてスタッフもアマチュアの人がボランティアで参加していて、運営も手作りでやってきました。温かみのあるイベントにするため、出演者もスタッフと一緒にイベント当日の会場の掲示物を一緒に作ってみたり、運営スタッフと一緒に会場の整理をやってみたり。そういうことを含めて、みんなで一緒につくるイベントというのが、In Unityの大きな特徴です。

多くのボランティアによって支えられている

年間を通じメインイベント以外にも小規模イベントを開催

―運営メンバーは何人で、どんな人たちですか

小川:運営メンバーは現在6人です。ほとんどの人が音楽経験があったり、イベント経験があった方、あるいはもともとアマチュアミュージシャンで、自分でライブハウスなどで演奏される方などです。唯一、音楽やダンスにまったく無関係でイベント運営のこともまるで知らなかったのが、私です。()

―運営メンバーの主な役割は何でしょうか

小川In Unityのメインイベントは毎年1月とか2月に開催しますが、そのイベントにむけてのPRイベントとしてミニライブ的なものを数回開催していて、1年を通じて、出演機会の提供や音楽やダンスを通じた地域の盛り上げなど、色々なイベントの企画をしています。

 

「次はこういうコンセプトで、こういうイベントをやろう」と話し合い、そのイベントに向けて、どういうグループをブッキングすればいいのか企画を立てます。また、メインイベントの規模が毎年、出演者が15組から20組あって、しかも2日がかりでやるようなイベントなので、出演者の選考がかなり大変です。

89月ごろに募集をかけて、10月ごろ選考をして、11月ぐらいに出演者の方に説明会を開くという流れがあるのですが、ここ最近は、それと並行して学生バンドオーディションという企画もあり、これもまた募集をかけて選考をしています。

 

学生バンドオーディションを始めたきっかけは、コロナ禍です。この企画がスタートしたのが、2021年です。コロナ禍で学生さんが部活もできない状況なので、音楽事業という特性を生かして、学生さんに向けての企画ができないだろうかということで始めました。

学生バンドの本格的なスタジオレコーディング

学生バンドの最優秀グループはCD制作と販売も

―選考を経て出演者を決めるそうですが、どういう選考をされていますか

小川:まず募集期間に募集要項をホームページでご案内して、それを見た方が自分たちの生演奏の動画を所定の応募フォームにアップロードしていただき、それぞれのアーティストさんの中原区とのつながりなど色々な情報を入れていただきます。

それを私たち運営メンバー+中原区役所のIn Unity担当の事務局の方が見て、イベントの趣旨に合うようなジャンルや方向性か、そもそもパフォーマンスのクオリティが高いかどうかを基準に基づいて点数化しセレクトしていきます。

―学生バンドオーディションの選考も同様ですか

小川:こちらは、学生世代のバンドであること、川崎市にゆかりのある人が必ず最低一人は含まれていること、さらにオリジナル楽曲であることなどが応募要件です。最優秀グループはイベント出場権を得るのと同時に音楽CDを制作してタワーレコードで販売もします。

学生バンドオーディションをやっていると、若者たちがこのオーディションを経験することで、とても成長することを、毎年、非常に感じることが多いです。大変ではありますが、やっていてすごく楽しいし、私のようなおじさんにとっては、他では得られない感動を受けるときがあります。(笑)

華やかなステージが繰り広げられる

「もう一度出演してみたいな」というイベントを常に目指す

―活動の中で一番大変なことは何でしょうか

小川:イベントをつくり上げるには、かなりエネルギーがいりますし、時間もとられます。それをボランティアとして本業と両立させて、少ない人数でやりぬいていくことは、かなりの負担にはなります。それが大変ではありますが、その分、本番が無事に終わったときには、非常に喜びが大きいですし、達成感があります。

―25年もの長きにわたって継続できた秘訣は

小川:出演するだけではなくて、出演したことで他のグループとの交流が生まれたり、スタッフと交流が生まれたりとか、出演してよかったな、楽しかったな、こんな本格的なステージで演奏できるなら、もう一度、出演してみたいなと思えるようなイベントを常に目指しているので、それを地道に繰り返しているからでしょう。


あとは、年に1回だけのイベントだと、どうしても関係性が薄くなりがちですので、ミニライブ的なものを年に数回やるなかで、過去の出演者に定期的にお声がけをして、「今度はこういうコンセプトで、こういう場所でイベントをやるので、ぜひ参加しませんか」と、こちらからもこまめにご案内したりして、イベントとしての継続性、常につながりを感じられるような仕組みを極力、心がけています。

―読者へのメッセージをお願いします

小川:今、世の中全般に文化事業に対する風当たりが強いですね。たとえば、文化的予算を削ろうよといったことが、どこの自治体でも普通になっています。In Unityも中原区役所と二人三脚で展開していますが、中原区在住の方でもIn Unityを意外と知らない人も多いです。もう少し知名度を上げて、In Unityが中原区にとってなくてはならないイベントになるまで、昇華しなければいけないと思っています。

In Unityについてちょっとでも聞いたり、目にしたりした方は、一度、会場に足を運んでいただいてほしいと思っています。市民の手作りのイベントでもこれだけの楽しいイベントがあるんだということを会場で体感していただきたいと思います。

 

今回は、土・日と二日間あり、どの時間帯でも楽しめるようになっていますので、すこしでもスケジュールの都合がつく方には、ぜひ来てほしいと思っています。

【In Unity2024】

開催日:224日(土)、25日(日)

会場:中原区役所 特設ステージ

詳細;In Unity オフィシャルサイト:https://inunity.jp/page-2195



この記事のライター

現代社会は、地縁、血縁、社縁(職場の縁)が希薄になり、個々人がバラバラに分断され、多くの人が孤立するようになりました。そんな社会を修復するにはどうすればいいか。その一つの解が、新たなコミュニティを創造することだと思っています。

関連する投稿


市民に開かれたラジオ局を目指す「かわさきFM」の大西絵満さん

市民に開かれたラジオ局を目指す「かわさきFM」の大西絵満さん

DeNAでは人事本部に配属されて経営者と同じ目線で組織を俯瞰するスキルを身に着けた大西絵満さん。かわさきFM(かわさき市民放送株式会社)に代表取締役として出向して、市民に開かれたラジオ局を目指し、次々と新たな番組作りに着手しています。どのような試みをしているのか、お話を伺いました。


【川崎市中原区】鍵交換・修理業者おすすめ7選|業者の選び方から費用相場など徹底解説!

【川崎市中原区】鍵交換・修理業者おすすめ7選|業者の選び方から費用相場など徹底解説!

「鍵が開かない…」「鍵が壊れた…」そんな、突然の鍵トラブルに困った方に向けて、本記事では川崎市中原区で鍵の交換・修理依頼ができる鍵屋さん7選をご紹介します。またサービス箇所から費用相場まで、鍵修理・交換に関する情報を解説します。


ワーク・ライフ・ソーシャルを人生の3本柱に

ワーク・ライフ・ソーシャルを人生の3本柱に

川島高之さんは11年前、上場企業の社長や総合商社の管理職時代に心掛けていたことを「イクボス」の定義・10ヶ条としてまとめあげ、世に出しました。すると多くのメディアで取り上げられ、瞬く間に全国に広がりました。川島さんいわく、ワーク・ライフ・ソーシャルという3本柱の生活を送ることで、しなやかで豊かな人生になるそうです。<br> <br> また、本業の商業施設Classense(クラッセンス)武蔵小杉の運営でも地域に還元できるイベントを開催して地域貢献を増やしていくとのことです。そこで、いわゆる「ソーシャル」活動がいかに大事か、お話を伺いました。


若者につながりつなげる居場所を提供する「ブリュッケ」

若者につながりつなげる居場所を提供する「ブリュッケ」

武蔵新城にある川崎若者就労・生活自立支援センター「Brücke」(ブリュッケ)のセンター長をされている三瓶三絵さんは、40代までに15回も転職をして、「何とかなる力」を身に着けたとか。今はその経験を活かして、生活に行き詰っている若者たちの支援に邁進しています。若者たちにどんな居場所を提供し、就労支援をしているのか、お話を伺いました。


日本文化の継承と環境問題に取り組む「あそびのわとわ」

日本文化の継承と環境問題に取り組む「あそびのわとわ」

シンプルな形で様々な色合いを紡ぎだせる日本の伝統文化・水引に惹かれた坂井美穂さんと関川房代さん。この伝統文化を継承したいと「あそびのわとわ」というユニットを二人で結成して、ワークショップを定期的に開催。一方、このユニットで環境問題にも取り組んでいるそうです。「深刻にならずに楽しむことが大事」とか。お二人にそんな活動についてお話を伺いました。(プロフィール写真の撮影:D STUDIO、右:坂井美穂さん、左:関川房代さん)


最新の投稿


市民に開かれたラジオ局を目指す「かわさきFM」の大西絵満さん

市民に開かれたラジオ局を目指す「かわさきFM」の大西絵満さん

DeNAでは人事本部に配属されて経営者と同じ目線で組織を俯瞰するスキルを身に着けた大西絵満さん。かわさきFM(かわさき市民放送株式会社)に代表取締役として出向して、市民に開かれたラジオ局を目指し、次々と新たな番組作りに着手しています。どのような試みをしているのか、お話を伺いました。


武蔵小杉のおすすめおしゃれディナー15選|家族で楽しめるお店や個室レストランを紹介

武蔵小杉のおすすめおしゃれディナー15選|家族で楽しめるお店や個室レストランを紹介

商業施設や飲食店が充実する武蔵小杉は、ディナーにおすすめの街です。武蔵小杉には数多くのレストランがあり、どこのお店にするか迷ってしまう方も多いのではないでしょうか。 今回の記事では、ファミリー、女子会、個室の3ジャンルに分けておすすめのお店をご紹介します。


【武蔵小杉】喫煙可能なおすすめ居酒屋14選|安い店から駅近の店までご紹介

【武蔵小杉】喫煙可能なおすすめ居酒屋14選|安い店から駅近の店までご紹介

東急東横線、JR線、横須賀線が乗り入れ、活気溢れる街、武蔵小杉。そんな都内や横浜からアクセスの良い武蔵小杉には多くの居酒屋が軒を連ねています。 本記事では、武蔵小杉で喫煙可能な居酒屋14店をご紹介します。 武蔵小杉で喫煙可能な居酒屋をお探しの方はぜひ参考にしてみてください。


【武蔵小杉】おすすめのラーメン店15選|家系・二郎系に分けて紹介!

【武蔵小杉】おすすめのラーメン店15選|家系・二郎系に分けて紹介!

東急東横線、JR線、横須賀線が乗り入れ、活気溢れる街、武蔵小杉。そんな都内からアクセスの良い武蔵小杉がひそかにラーメン激戦区となっているのをご存じでしょうか? そこで本記事では、家系・二郎系とジャンル別におすすめラーメン店をご紹介します。また深夜営業を行っている店舗も紹介します。


武蔵小杉のおすすめ穴場ランチ15選|おしゃれイタリアンやお得に楽しめる定食を紹介

武蔵小杉のおすすめ穴場ランチ15選|おしゃれイタリアンやお得に楽しめる定食を紹介

東急東横線、JR線、横須賀線が通っており、活気溢れる街である武蔵小杉。商業施設や飲食店も充実しており、ランチにおすすめの街です。 武蔵小杉には数多くのレストランがあり、どこでランチするか迷ってしまう方も多いのではないでしょうか。 今回の記事では、武蔵小杉でおすすめしたい穴場ランチスポットをご紹介します。


区民ライター募集