「シェア実家」を掲げた一時預かり所「いいんだよHOME」がオープン!

「シェア実家」を掲げた一時預かり所「いいんだよHOME」がオープン!

ママさんたちの困りごとのヒアリングを重ねて浮かび上がってきたのが、「実家が身近にあれば」ということ。それならば、実家をつくってしまえばよいと開設したのが、「シェア実家」の発想による一時預かり所「いいんだよHOME」。煩雑な手続きは不要で、当日対応も可能とか。代表の須山智子さんにお話を伺いました。


ママさんたちの多様な困りごとの解決策

―「シェア実家」というのはユニークな発想ですね

須山:コワーキング親子サロン「いいんだよひろば」をやりながら、どういう形だと今の子育ての大変さが軽くなるんだろうと、いろんなママさんにヒアリングをしていました。そうすると置かれている状況によって困っていることと、欲しいものが色々と出てきて、「ご飯を作るのが大変」という方もいれば、「ちょっとひとりの時間が欲しい」とか、それぞれの困りごとがあって多様でした。

 

そこで、何をつくったら解決できるんだろうと考えたときに、実家だなと思ったんです。すぐ近くに実家があれば、疲れたときに予約がなくても、ふらっと行って子供を見てもらえて、自分は休むことができます。実際、川崎市では転入者の方が多くて、実家が近くにない方が大勢います。それならば、実家自体を作ってしまえば、いっぱいある困りごとが解決できるなというのが、「シェア実家」の由来です。

―潜在的な需要はかなりあると思いますが、手応えはいかがですか

須山:一時預かりを常設で始めてみて、いろんな用事で利用される方が多いですね。ちょっと預けるところが本当にないんだなということを感じました。

 

たとえば、お子さんが二人いて、上の子を歯医者に連れていきたいけれど、下の子が歯医者さんで騒ぎ出すと困るから、その時間だけここに預けていくとか、ちょっと買い物に出かけるので預けたいとか、本当に様々な理由でちょっとここに預けて用事を済ませるといった方が多いです。

「こういった施設があるといいですね、助かる!」といった声が多いので、立ち上げてよかったなと思います。

「ちょっと預けたい」のニーズに応える

子どもを預ける罪悪感を払しょくする「ひろば+預かり」

―ワンオペで育てていることが、産後うつとか虐待の原因のひとつになっているそうですね

須山:実家が近くにないということは、必然的にワンオペで育てることになります。子どもはかわいいはずなのに、一人で世話をしていると、わからないことが多くて辛くなってしまうのはごく自然なことです。誰かに相談したくても、友達で子どもを産んでいる人が少なかったり、産んでいてもたびたび相談できるような仲でもなかったりします。

 

私もママ友ができたのは、上の子が保育園に上がって、3歳ぐらいになって、ようやく保育園の同級生のお母さんと仲良くなりました。それまでは保育園への送り迎えだけで、子育ての相談をする相手が本当にいなかったです。

―クラウドファンディングも成功を収めましたが、どう使っていますか

須山:多くの方が一時預かりの「利用券」を事前に購入されています。また、「恩送りチケット」と言って、ママたちに使ってくださいという一時預かりの利用券のギフトチケットを、やはり多くのスポンサーが購入してくださったので、その枠を使って利用されている方が多いですね。

 

あとは、従来、民家だったので、施設として設備を整えるために避難誘導灯をつけたり、あるいは棚などの備品を購入させていただいたりしました。

 

―子どもを預けるのに伴う罪悪感を「ひろば+預かり」で垣根を低くしているそうですね

須山:自分の子どもなんだから、自分で面倒を見るのが当たり前といった感覚がどこかにあって、別に仕事しているわけでもないのに、おカネをかけて預けることに後ろめたさを感じることがあります。一方、「いいんだよひろば」は、子どものためにもいいことをしているし、自分も一緒だし、日中、親子で遊びに来る場所なので、とくに罪悪感もありません。

 

その「いいんだよひろば」で一時預かりもやっているよということがわかり、だったら、私も預けてみようかなと思えたり、一時預かりもあるから使ってねと言われたら、利用してみようかなと思ってもらったり、「いいんだよひろば」がきっかけで、預けることのハードルが下がればいいなと思っています。

「いいんだよひろば」と併設していることで心の垣根を低くする

事前見学・登録なしで当日での対応も可能

―一般的に一時預かりは手続きなどが煩雑なのでしょうか

須山:相当、利用しづらいです。電話で問い合わせをすると、一度、見学に来てくださいと言われて見学に行くと、そこで、事前の手続きをするのでもう一度来てくださいと言われ、子どもを預ける当日もいろんな書類をもって行かなければいけないとか、予約を取るのも、電話が殺到してすぐにいっぱいになってしまい、その後も全然、予約が取れないといったことが起きています。

―どんな理由でも利用可能とされていますが、利用理由を訊かれるものでしょうか

須山:たいていは訊かれますね。仕事であれば堂々と書けますが、買い物などだと書きにくいですね。また、「いいんだよHOME」では、事前見学・事前登録はありませんし、当日での対応も可能です(アレルギーなど必要な情報はきちんと確認しています)。まず、当日対応可能な施設はとても少ないです。


この間も大雨が降った日に夕方、上の子の幼稚園のお迎えに行くのに、この雨の中、下の子を家に置いていくわけにもいかないとか、自分が急に熱が出てしまったとか、だいたい預けたいときというのは急なので、ほとんど今のところ、直前予約ですね。


また、ネット予約ができるのですが、これも一時預かり所ではあまり普及していません。また、1時間から預かりますというのも、珍しいと思います。

世代を超えた多世代スペースで癒しの場をつくる

―多世代スペースを今後つくる予定だとか。なぜですか

須山:私は上の子が生まれたのが、20112月で、その直後に東日本大震災が起きました。父の実家が鹿児島なのですが、その実家に赤ちゃんを連れて3か月避難していました。その時に父の兄の家に居候させてもらっていたのですが、そこは色々な親戚が出入りしていたり、お祖母ちゃんがいたりして、とても心が癒されました。

 

また、今はお休み中ですが、以前は、この場所にご年配の方が健康マージャンをしにやってきて、帰るときには子どもたちをのぞきに来て、「今日も元気ね」と声をかけてくださいました。それが、とてもいいなと思っていて、多世代スペースをつくろうと考えています。

年配の方が健康マージャンをする場にも

―今後の抱負はありますか

須山:ママさんたちの話を聞いていると、色々と次に必要なことが見えてきます。たとえば、3人お子さんがいるママが来ていて、2歳から小学2年生までのお子さんがいるので、小学生も預かってほしいといったご希望を言われました。ですから、夏休みの間だけでも、隣の部屋で小学生向けの寺子屋をやろうかなとも考えています。

―読者へのメッセージをお願いします

須山:クラウドファンディングで用意した恩送りのギフト・チケットがすぐになくなってしまいました。3時間無料券を困っているお母さんに使ってねというものでしたが、やはり利用したい人はいっぱいいるけれど、おカネがかかってしまうので、気楽には使えないんだなというのをすごく感じました。

 

クラウドファンディングは期間限定ですから、継続寄付のような形で、本当に困っている方が使えるようなシステムを考えるので、また、ご寄付のご協力をお願いしたいなと思っています。

 

また、もともと「いいんだよひろば」に来てくれていたパパ・ママ以外で「いいんだよHOME」を利用される方って、たまたま前を通りかかって見つけましたとか、グーグルマップで検索して見つけましたといった方が多くて、「見つけてラッキーでした!」というおっしゃる方がいます。

 

ですから、もし近くで、小さいお子さんがいるパパ・ママがいたら、「こういうところがあるよ」と、ぜひ、教えてあげてほしいと思います!

「いいんだよHOME」ホームページhttps://iindayohome.com/

 

須山智子さんとの出会いの場川崎市中原区100人カイギ

この記事のライター

現代社会は、地縁、血縁、社縁(職場の縁)が希薄になり、個々人がバラバラに分断され、多くの人が孤立するようになりました。そんな社会を修復するにはどうすればいいか。その一つの解が、新たなコミュニティを創造することだと思っています。

関連する投稿


保育料の減免を拡充!第2子半額、第3子以降無償化へ

保育料の減免を拡充!第2子半額、第3子以降無償化へ

(2025年3月26日更新)川崎市は、多子世帯の経済的負担を軽減するために、2024年4月から保育料の支援を全世帯へ拡大します。きょうだいが同一保育園に通えるように、利用調整基準も見直されます。この記事では、子育て家庭の負担が軽減され、育児のサポート体制が強化される川崎市の子育て支援施策について、詳しくご紹介します。


シェアキッチンや子ども食堂など多彩な活動を展開する「木月キッチン」

シェアキッチンや子ども食堂など多彩な活動を展開する「木月キッチン」

2011年の東日本大震災の衝撃で、「いつどうなるかわからない。後悔しない生き方をしよう!」と元住吉で飲食店「木月キッチン」を始めた時田正枝さん。股関節を怪我したきっかけでお店をシェアするというユニークな展開に。一方で、子ども食堂などを運営して地域の社会貢献活動にも積極的です。その多彩な活動についてお話を伺いました。


「能力の見える化」で障がい者雇用の促進に邁進するダンウェイの高橋陽子さん

「能力の見える化」で障がい者雇用の促進に邁進するダンウェイの高橋陽子さん

18歳以上の障がい者のうち、約6%しか週に20時間以上の雇用がなされていません。なぜかといえば、障がい者には仕事ができないという固定観念があるからです。そこで、障がい者の能力を見える化すれば、雇用は促進されると考えたそうです。どうすれば見える化できるのか、武蔵新城にあるダンウェイ株式会社の代表取締役社長・高橋陽子さんにお話を伺いました。


市民に開かれたラジオ局を目指す「かわさきFM」の大西絵満さん

市民に開かれたラジオ局を目指す「かわさきFM」の大西絵満さん

DeNAでは人事本部に配属されて経営者と同じ目線で組織を俯瞰するスキルを身に着けた大西絵満さん。かわさきFM(かわさき市民放送株式会社)に代表取締役として出向して、市民に開かれたラジオ局を目指し、次々と新たな番組作りに着手しています。どのような試みをしているのか、お話を伺いました。


ワーク・ライフ・ソーシャルを人生の3本柱に据える「イクボス」の川島高之さん

ワーク・ライフ・ソーシャルを人生の3本柱に据える「イクボス」の川島高之さん

川島高之さんは11年前、上場企業の社長や総合商社の管理職時代に心掛けていたことを「イクボス」の定義・10ヶ条としてまとめあげ、世に出しました。すると多くのメディアで取り上げられ、瞬く間に全国に広がりました。川島さんいわく、ワーク・ライフ・ソーシャルという3本柱の生活を送ることで、しなやかで豊かな人生になるそうです。<br> <br> また、本業の商業施設Classense(クラッセンス)武蔵小杉の運営でも地域に還元できるイベントを開催して地域貢献を増やしていくとのことです。そこで、いわゆる「ソーシャル」活動がいかに大事か、お話を伺いました。


最新の投稿


都会のオアシスで、命を育む喜びを体験!コスギアイハグ トレファーム収穫祭体験レポート

都会のオアシスで、命を育む喜びを体験!コスギアイハグ トレファーム収穫祭体験レポート

3月23日、武蔵小杉のコスギアイハグで開催された収穫祭に参加しました。以前から気になっていたコスギアイハグのビニールハウスに入って野菜収穫体験ができるとあって、胸を躍らせて会場へ向かいました。


保育料の減免を拡充!第2子半額、第3子以降無償化へ

保育料の減免を拡充!第2子半額、第3子以降無償化へ

(2025年3月26日更新)川崎市は、多子世帯の経済的負担を軽減するために、2024年4月から保育料の支援を全世帯へ拡大します。きょうだいが同一保育園に通えるように、利用調整基準も見直されます。この記事では、子育て家庭の負担が軽減され、育児のサポート体制が強化される川崎市の子育て支援施策について、詳しくご紹介します。


中原区内で妊婦健診や分娩に対応している病院・クリニック

中原区内で妊婦健診や分娩に対応している病院・クリニック

(2025年3月26日更新)妊娠が分かった後、妊婦健診や分娩をどこで行うか悩む方も多いのではないでしょうか。 この記事では川崎市中原区内で妊婦健診のみや分娩まで対応している病院やクリニックをご紹介したいと思います。


【川崎市】2025年4月のイベント情報

【川崎市】2025年4月のイベント情報

春の訪れとともに、川崎市では家族で楽しめるイベントやスポーツ大会、音楽公演などが多数開催されます。美しい花々に囲まれたフェスや、親子で参加できるコンサート、アクティブに体を動かすスポーツ体験など、多彩なイベントが目白押しです。ぜひ、ご家族や友人と一緒に参加し、春のひとときを満喫しましょう! ※イベント情報は予告なく変更になる場合がありますので、お出かけ前に必ずイベントや施設の公式HPにて最新情報をご確認ください。


【武蔵小杉】ケーキ屋おすすめ10選|持ち帰りやイートインを紹介

【武蔵小杉】ケーキ屋おすすめ10選|持ち帰りやイートインを紹介

誕生日や記念日、クリスマス、普段のご褒美など、ケーキを食べたい時にどのケーキ屋を選ぶか迷ってしまいますよね。 武蔵小杉には数多くのケーキ屋があり、それぞれに看板メニューなど特徴があります。


区民ライター募集