共稼ぎ家庭のオアシス・こども食堂「まきまきキッチン」

共稼ぎ家庭のオアシス・こども食堂「まきまきキッチン」

今、中原区ではどんどんこども食堂が増えています。そこには貧困問題もありますが、共稼ぎの家庭では、家事の時間に追われて、なかなか親子がゆっくりと向き合って食事をすることができない状況があります。

そこで、こども食堂「まきまきキッチン」では、そのような親子に月1回、ゆったりとした食事の時間を提供しています。

今回は、「まきまきキッチン」代表の安西巻子さんにお話を伺いました。


おしゃべりをしながらゆっくりと食事を楽しめる場

―2019年からこども食堂を始められましたね。どういう経緯で始められましたか

安西:以前からこども食堂をやりたいと思っていたら、たまたま元住吉で食堂「木月キッチン」を営んでいる時田正枝さんが「こども食堂を始めたいけれど、誰か一緒にやりませんか」ということをFacebookで書いていたので、すぐ時田さんに連絡をとって会うことになり、「木月こどもキッチン」を立ち上げました。

 

ただ、こども食堂を開催する木月キッチンは、カウンターだけのお店で、補助の椅子を入れても10人程度しか座れません。こども食堂を続けていくうちにだんだん来訪者が増えて、時には50人近くなってしまい、10人程度の人たちが3回転ぐらい入れ替わることになりました。そうすると、ゆっくりと食事をすることができません。

おしゃべりや遊んだりしながら楽しく食事をしてもらいたいという想いが募り、もっと広いところでこども食堂をやりたいと思っていました。すると、藤沢市方面でこども食堂を運営している方と出会って、教会を会場に利用していることを教えていただき、さらに武蔵小杉の「カソリック中原教会」を紹介してくれました。

この教会には、信徒会館という施設があって、集会場に調理室もついています。そこを無償でお借りできることになりました。そういった経緯で、2019年9月からこども食堂「まきまきキッチン」を始めましたが、2020年3月にはコロナ禍で、教会が立ち入り禁止になってしまいました。

時には来訪者が80人ほどになることも

コロナ禍のおかげで食材調達には困らなかった

ところがコロナ禍の影響で、飲食店などで食材が余ってしまって、どんどん、食材などが送られてきました。幸いなことに、元住吉にある川崎市国際交流センターが玄関前広場を無償で貸してくれたので、そういった食材を配ることができました。

コロナ禍のおかげで、逆に支援者や支援企業からの食材の調達には困らなかったことは幸運とも言えます。今年に入ってコロナ禍も収束したので、もとの教会に戻り、大勢が一緒に食事をすることを再開しました。

―運営メンバーはどういう方々ですか

安西:私はもともと中原区の保育ボランティア団体「にじの会」に所属していて、その会で「こども食堂を運営することにしました!時間があれば、手伝ってくれると助かります」と呼びかけたら、みんなが「ぜひ手伝いたい」と賛同してくれました。おかげさまで、10人以上の方々にボランティアとして手伝ってもらっています。

 

―「遊べる食堂」を目指しているそうですね

 

安西:コロナ禍以前は、夕食を子どもたちと一緒に食べていましたが、今は、10:00~1400頃の昼食の時間帯に食堂を開催しています。すると、午前10時頃から子どもたちが教会の園庭に遊びに来ています。

苦労を分かち合うことで前向きな気持ちに

―来訪者の親子は必ずしも貧困家庭だからというわけでもないとか

安西:中原区のご家庭の多くは共稼ぎをしています。そのため、保育園から子どもを連れ帰っても、食事をしながら洗濯もするなど、子どもと一緒にテーブルについて、ゆっくり食事をする時間がなかったりする方々が多いのです。そこで、こども食堂で食事をすることで、親子がゆっくり向かい合うことができます。

 

―共稼ぎをされているお母さんの多くは、仕事と子育ての両立で大変な思いをされていますね。また、そういう環境の中で、お母さんも孤立しがちです

 

安西:月に1回でもこども食堂に顔を出していただいて、地域の人と触れあうことで、隣近所のお母さんも同じように大変な思いをしながら苦労しているんだと肌で感じて、「あの人も頑張っているのだから、自分ももう少し頑張ってみよう」というつながりができれば、気持ちが前向きになるのではないでしょうか。

―何歳ごろのお子さん多いですか。また、何人ぐらい来訪しますか

安西1歳ぐらいの幼児から小学校低学年の子どもが多いですね。開催日が毎月第3土曜日なので、子ども一人で来ることはまずありません。たいてい親子連れで、50人~80人ほどの方々が一緒に食事をしています。

使命感というよりは無理せず活動を楽しむ

―個人を含めて様々な支援者や支援団体が協力していますね

安西:たとえば、アマゾンの「ほしいものリスト」を利用して、まったく知らない人が1000円、2000円分のお菓子などを送っていただいたりしています。特にクリスマスなどには、たくさんの寄付が集まりますね。「世の中、こんなに優しい人であふれているのか」と感動します。

 

また、NPO法人全国こども食堂支援センター「むすびえ」に仲介していただき、コンビニエンスストアなどからも協力していただいています。特に私が支援のお願いに足を運ぶわけではありませんが、インターネットなどを通じて告知していると、企業の方々から連絡をいただき支援していただくことが多いですね。

いつもおしゃべりで賑やかな調理室

―こども食堂を持続させる情熱はどこから出てきますか

安西:熱い想いというのがないから続くのかもしれません()。「絶対やらなければいけない」とか、「絶対続けなくちゃいけない」という想いはなくて、止めたくなったら止めればいいのかなぐらいに緩く考えています。

 

―それでは、まきまきキッチンの今後の発展というのも白紙ですか

 

安西:何もありませんね()。もちろん、来訪者がどんどん増えて、もっと大きな施設を無償で貸し出していただけるところがあれば、その時に「やってみるか」と考えるかもしれませんが。使命感というよりは、無理せず楽しく活動できれば、それでいいと思っています。

こども食堂グループ「Aina」を立ち上げ後続を後押し

一方で、こども食堂グループ「Aina」(アイナ)という団体を立ち上げて、中原区内のこども食堂のとりまとめをしています。区内のこども食堂間で、食材など物資の融通をみんなでやろうというものです。

「Aina」は、まきまきキッチンと元住吉の木月キッチン、向河原のふれあい食堂の3団体が幹事団体になっています。この3団体は場所が近いので、以前からお菓子などが余ったり、逆にお米などが足りなかったりした場合、物資を融通しあってきました。それをもっと広範囲に広げれば、もっと融通が利くようになります。そういうネットワークづくりに注力しています。

目標は、小学校区にひとつはこども食堂を立ち上げることです。こども食堂をやりたい人がいれば、可能な限り後押ししていきます。自分にできることには限りがありますが、やりたい人の手助けや後押しを通じて、もっとこども食堂を増やしたいですね。

また、本当に困っている人が、毎日どこかで食事ができるぐらい子ども食堂があったらいいなと思っています。今、「Aina」には中原区内の10団体程度が参加していて、だんだん増えています。こども食堂を利用したい人から問い合わせが来た時に、その相談に乗って、すぐに最寄りのこども食堂を紹介できるようになりたいです。

―読者へのメッセージをお願いします

安西:社会貢献をしたいと思っている方は、とにかく一歩踏み出してやってみたらいいと思います。失敗してもいい。1回チャレンジしてみるだけでもいいのではないでしょうか。

 

まきまきキッチンは、緩くふわっと活動しているので、いつ来ていただいてもいいですし、ボランティアさんも募集していますので、ぜひ仲間に加わってほしいと思います。みんなで知恵を出し合って、得意なことで役割を分担して活動することは楽しいですよ!

まきまきキッチン・ホームページ:https://makimaki-kitchen.jimdofree.com/

この記事のライター

現代社会は、地縁、血縁、社縁(職場の縁)が希薄になり、個々人がバラバラに分断され、多くの人が孤立するようになりました。そんな社会を修復するにはどうすればいいか。その一つの解が、新たなコミュニティを創造することだと思っています。

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