■ヤングケアラーとは?
皆さんは「ヤングケアラー」という言葉をご存知でしょうか?
最近はニュースで聞くこともあるので、ご存知の方が多いかも知れません。
元々、イギリスで1990年代前半から徐々に使われ始めた言葉なんです。それから2014年に「子どもと家族に関する法律」が成立し、自治体に対してヤングケアラーを適切に支援することを義務づけました。
日本国内では、2020年に埼玉県で全国初となる「ケアラー支援条例」が制定されました。それから全国の自治体でケアラー支援条例を制定する動きが広まり、今では約20の自治体で施行されています。
そして2024年6月に「子ども・若者育成支援推進法の改正法」が成立し「ヤングケアラー」を国や自治体が必要な支援を行う対象として明記されました。
この改正法では、ヤングケアラーを「家族の介護その他の日常生活上の世話を過度に行っていると認められる子ども・若者」と定義しています。
■川崎市内のヤングケアラーはどのように把握しているの?
直近では、令和2年に実施した「川崎市子ども・若者調査」では、学校に調査票を配布し回収しており、その結果になりますが、中学2年生に対し「学校の部活動や生徒会活動、地域のスポーツクラブや文化クラブに参加していない」という設問に対する理由で「家族の世話・家事などがあるから」を挙げた人数は2811人中16人でした。
調査は標本調査(全数ではなく一定数を調査する方法)なので、実際はもっと多いと思われます。当調査は4年ごとに実施しており、次回は今年(令和6年)に予定されています。
■周知のためのリーフレット配布と関係機関職員の研修会を実施
川崎市こども未来局では、「ヤングケアラー」の概念を子ども含め市民の皆さまに知ってもらうために、リーフレットを学校などの関係機関に配布しています。
また、ヤングケアラーの関係機関の職員に対し、ヤングケアラーの早期発見ポイントや機関同士の連携などをテーマにした研修会を実施しています。理解を深めるだけでなく、お互いの機関がどういった支援をしているのかを知ることも非常に大切です。
ヤングケアラーひとりひとりが抱える課題や悩みは様々なので、調査や関係機関・支援団体等と連携して状況を把握し、ひとりひとりのニーズに合った支援が行える体制づくりに取り組んでいます。
■ヤングケアラーの背景と問題点
ヤングケアラーが生まれる背景は、各家庭によって異なりますが、「経済的苦境」「核家族化」「介護人材の不足」「親の病気や障害」「ひとり親の増加」などが挙げられます。
金銭的余裕がなく施設に入所させる事ができない、頼れる身内がいないなどといった事情で子どもが介護の役割を引き受ける結果になっています。
ヤングケアラーには以下の問題点があります。
- 学業に時間を割くことができず学力や進学への影響
- 部活動や友達と遊ぶ時間などが奪われ、交友関係への影響
- 睡眠不足やストレスなどによる心と体の健康への影響
家族を優先するので「子ども」としての時間が取れないため、やりたい事ができない、将来の夢をあきらめざるを得ないなどが考えられます。
ヤングケアラーも将来の日本を担っていく大切な人材です。『世の中の子どもが子どもらしく生きられる社会』を実現するために、他人事と思わずに、皆さん一人一人がヤングケアラーについて理解を深めることが大切だと思います。
■LINEや電話による相談窓口を設置
ヤングケアラーの相談窓口として、神奈川県が2022年5月に「かながわヤングケアラー等相談LINE」、続く6月に「電話相談窓口」を開設していますので、一人で悩まずに気軽に相談してみてください。当事者でなくともご家族やご友人、近隣の方からの相談も受け付けています。
◆かながわヤングケアラー等相談LINE
【受付時間】
月曜・火曜・木曜・土曜(週4日)
14:00〜21:00(祝日、休日、12月29日~1月3日を除く)
【相談方法】こちらからLINEに追加して相談することができます。
◆かながわケアラー電話相談
【受付時間】
水曜・金曜:10:00〜20:00
日曜:10:00〜16:00(祝日、休日、12月29日~1月3日を除く)
【電話番号】045-212-0581
■子どもや若者がすこやかに育ち成長できる街を目指す
川崎市は、「ヤングケアラー」だけでなく「「児童虐待・不登校・いじめ・非行・引きこもり」などの課題への対応や、教育・福祉・保健・雇用等、他分野に展開する子ども・若者及び子育て支援を効果的に推進するため、令和4年3月に「第2期 川崎市子ども・若者の未来応援プラン(計画期間:令和4年度~7年度)」を策定しました。
子どもや若者が将来に夢と希望を持ち、すべての家庭が安心して子育てができ、親が子どもを育てる喜びを感じることができる街づくりを目指しています。
ヤングケアラーについては、本人自身が介護や世話を当たり前と思い自覚していなかったり、支援や介入を拒否する家庭もあるので、支援が難しい問題ではあります。
しかし、今年(令和6年)に実施予定の「川崎市子ども・若者調査」や令和8年度に向けての「川崎市子ども・若者の未来応援プラン」の改定が予定されているので、これからより良い支援と環境整備がされていくことが期待されています。