タワーマンション内でコミュニティを築き上げた笹田恵子さん

タワーマンション内でコミュニティを築き上げた笹田恵子さん

かわさきFMのパーソナリティとして、また、イベントのMCとして活躍する笹田恵子さん。学生時代は深夜のバイトをして家計を助けていた一面もあります。一方で、武蔵小杉のタワーマンションの住人として、マンション内のコミュニティづくりにも積極的に関わってきたとか。どのようなコミュニティを築き上げたのか、お話を伺いました。


香港上海銀行時代にMCの才能が花開く

―専門学校時代は深夜のバイトなどをやって家計を助けていたそうですね

笹田:高校三年生の夏、進路を決めなくてはいけなくなった時に、家にはおカネがないことがわかりました。父がほとんど視力のない状態になって会社を辞めなければいけなかったのです。ですから、学費が安い専門学校なら自分でバイトをして学費が払えるかなと思い、専門学校に進学することにしました。その当時は、ファミリーレストランのすかいらーくで夜10時から深夜2時まで働きました。

―夢は航空会社のキャビンアテンダント(客室乗務員)だったそうですね

笹田:そうです。理由はお給料が良かったからです。おカネが不自由だったし、母が日中は働きに出て、夜は内職をするような状況でしたから、家計の足しになるように、少しでもお給料のいい仕事をしたかったのです。

―しかし、客室乗務員にはなれずに、香港上海銀行に入行することになりましたね

笹田:当時、客室乗務員の試験は、新卒では大卒は採用していましたが、高卒は空きがない限りは募集がないのです。専門学校卒は、高卒になってしまうのですが、日本航空が高卒に空きができたので、募集していました。そこで試験を受けたのですが、倍率は200倍。当時、年齢制限がなかったので、様々な実績を積んだ方たちが応募してきて、19歳の私はひよっこもいいところで、見事落ちてしまいました。

 

そこで専門学校の先生が、香港上海銀行を推薦してくれたのです。サービス業として、人と話す仕事をしたかったので、最初は送金課などに配属されましたが、窓口に移りたいと願い出たら、窓口業務に変えてもらえました。

―その頃にMCの才能が花開いたそうですね

笹田:そうなんです。ある時、合コンをやったときに、その中の男性のお母様が、結婚式の司会の派遣会社をされていたんです。当時は携帯電話がなかったので、家の固定電話にかけるしかなかったのですが、その男性の家に電話をしたらお母様が出られて、「あなたはすごくいい声をしているから、結婚式の司会の派遣会社に登録しない?」と言われ、自信は全くなかったのですが、お引き受けしたのです。

―その当時、MCのレッスンをしたことはなかったのですか

笹田:友達の結婚式の司会をするようになってから、「これは無責任なことをしてはいけない」と思い、銀行員をしながら夜間に6カ月間、自由が丘のスクールに通いました。結婚式の司会養成所みたいなもので、週一回通っていました。

イベントのMCとしても活躍中

タワーマンション内で「手書きメモ」作戦を展開

―出産を機に香港上海銀行は辞められましたね

笹田:子どもが切迫流産だったので、何かあってはいけないと会社を辞めました。ただ、それではつまらないので、当時、川崎市幸区に住んでいたのですが、幼稚園のPTA副会長をやったり、町内会の子ども会をママさんたちと一緒にやっていました。

―その後、武蔵小杉のタワーマンションに引っ越されるのですか

笹田:その間に大阪に主人ともども家族で引っ越して、5年間過ごしました。その後、横浜市泉区に2年間住み、娘たちの私立中学進学のターニングポイントがあったので、武蔵小杉のタワーマンションに移りました。

―タワーマンション内で、「手書きメモ作戦」をされたそうですね

笹田:まず、主人が理事会の理事に、私はコミュニティ委員会の委員になりました。いわゆるマンションの中の人たちとイベントを開催してコミュニティをつくりましょうという委員会です。なぜかというと、娘たち二人は私立の中学に進んだので、地域のママ友というのが、わたしにはいなかったからです。ママ友がいないので、友達を作るとしたら、自分でつくるしかないなと思ったのです。

 

そこで、いろんな人に「ウチで飲みませんか?」と声をかけて、飲み仲間ができたんです。そうしているうちに、東日本大震災の頃に「同じフロアにどんな人がいるのか知りたいね」と主人と話をして、私は便せんに「いついつにホームパーティをするので、ぜひいらしてください。出入り自由です」と書いて、同じフロアの11世帯にポスティングをしました。

 

そうしたら、当日はお子さんを連れてきてくださった方もいました。それが楽しくて、コミュニティ委員会でフロア会をやらない?という話になって、「じゃぁ、コミュニティ委員が率先してフロア会の進行役をやらせてもらって、やろうよ」ということになりました。

「手書きメモ作戦」でコミュニティづくりの第1歩を踏み出す

「縦の長屋」の関係作りを構築

また、横のつながりだけではなく、私はコミュニティ委員会や理事会で仲良くなった方々で、違うフロアの方にも親しい飲み仲間ができました。その中で「笹田家に来ると、長屋みたいですよね」という方がいらっしゃり、主人が「そうですね。長屋って普通、横長の関係だけど、ここは縦の関係ですね」と言って、それからは、仲間うちでは「縦の長屋」と呼んでいます。

 

実際、LINEで「ご飯作ろうと思ったら、マヨネーズが足りなくなってしまって、大さじいっぱい貸してくれない?」と頼むと、「ストックが1本あるから、買い取ってくれない?」などといった会話ができたり、「トマト1個欲しいんだけど…」など、ご飯を作る際に融通しあったりもしています。

かわさきFMのパーソナリティとして起用される

―一方で、2016年にかわさきFMのパーソナリティになられましたが、きっかけは

笹田:きっかけは、今は一般社団法人で、当時はNPO法人だった小杉駅周辺エリアマネジメント(以下、エリマネ)が、「コスギフェスタ」といって「武蔵小杉を子どもたちのふるさとに」ということで、イベントを開催していたのですが、第1回目から司会をやらせてもらっていました。

 

そのエリマネが事業の一つとして、武蔵小杉が情報発信するラジオ番組を作りたいということで、「どうせなら、武蔵小杉に住んでいる人がパーソナリティになるのが良くない?」ということで、お声がけをいただきました。今まではイベントで人の顔をみて、話すことしかなかったけれど、ラジオは声だけになってしまうけれど、声のトーンとか早さなどで思いを伝えることが面白いと思ったので、お引き受けしました。

リスナーの元気がでる番組作りを心がけている

―パーソナリティとして心がけていることはありますか

笹田:番組のコンセプトは「川崎市内で頑張る人を応援したい!」ということなので、川崎市にゆかりのある人をゲストにお呼びしていますが、「こういう人がいっぱいいて頑張っているんだよ。有名人だけが頑張っているわけではないよ」と、聴いている方たちが、「頑張っているのは、自分だけじゃないんだ」と元気になってくれればいいと思っています。

 

また、ゲストの方が気持ちよく話してくれるように、どんなことを聞いてほしいか、事前に打ち合わせはして、質問をするのですが、その質疑応答通りではつまらないので、私がやりたいのは、その方の表情を見て、答えの内容を聞きながら、台本になくてもあえて「この人は、こういう人なのかな」と訊いて、その方が話していて楽しくなるような質問にしたいなとは思っています。

―今後の抱負をお持ちですか

笹田:ある方に10年ほど前、「笹田さんの活動を他のタワーマンションでもやってくれませんか」と言われたことがありました。ですから、今後は、いろんなマンションの方たちのコミュニティづくりをやっていけば、マンション同士のコミュニティもできて、武蔵小杉を活気のある街にできるのではないかと思っています。その手助け的な人間になれたらいいなと思っています。

―読者へのメッセージをお願いします

笹田:自分から率先して挨拶をしてみたらどうでしょうか。挨拶を通じて、人と人が近づいて、コミュニケーションがとれるタイミングができるかもしれません。LINEとかメッセンジャーでも良いのですが、フェイスツーフェイスでリアルに挨拶を交わしていれば、コミュニケーションが密になり、心豊かな街になると思います。

笹田 恵子さん

 フリーアナウンサー、ラジオDJ、イベントMC。武蔵小杉在住。コスギに欠かせない司会として、様々なイベントのステージに立つ。武蔵小杉・川崎市の情報を発信するかわさきFMのラジオ番組「かわさきショウタイム コスギスイッチON!」のパーソナリティも務めている。

笹田恵子さんとの出会いの場川崎市中原区100人カイギ

この記事のライター

現代社会は、地縁、血縁、社縁(職場の縁)が希薄になり、個々人がバラバラに分断され、多くの人が孤立するようになりました。そんな社会を修復するにはどうすればいいか。その一つの解が、新たなコミュニティを創造することだと思っています。

関連する投稿


多拠点コミュニティ「ADDress」という新しい暮らし方

多拠点コミュニティ「ADDress」という新しい暮らし方

多拠点コミュニティを提唱するADDress。その武蔵新城A邸の家守を務めるのが横田寛さん(写真・左)と広武真季さん(写真・右)。家守というのは、いわば管理人ですが、ごはん会などを催して地域との交流も盛んだとか。利用目的は様々ですが、ADDressならではの絶妙な距離感が魅力だそうです。


「平日は教師、週末はプロレスラー」を目指す大原はじめさん

「平日は教師、週末はプロレスラー」を目指す大原はじめさん

中学1年生の時にテレビでプロレスの試合を観て、すっかり魅了されてプロレスラーを目指した大原はじめさん。28歳の頃、祖父母の介護をすることになり人生観が激変。今では、介護予防の体操教室を川崎市で積極的に展開。一方、近い将来、「平日は教師、週末はプロレスラー」を目指しているそうです。


「子どもたちの最善の利益のために」を掲げる認可保育園「HOPPAパークシティ武蔵小杉」

「子どもたちの最善の利益のために」を掲げる認可保育園「HOPPAパークシティ武蔵小杉」

学習塾で創業した株式会社京進が運営する認可保育園「京進のほいくえん HOPPAパークシティ武蔵小杉」の施設長の深見真奈さんに保育理念などのお話を伺ってきました。


「シェア実家」を掲げた一時預かり所「いいんだよHOME」がオープン!

「シェア実家」を掲げた一時預かり所「いいんだよHOME」がオープン!

ママさんたちの困りごとのヒアリングを重ねて浮かび上がってきたのが、「実家が身近にあれば」ということ。それならば、実家をつくってしまえばよいと開設したのが、「シェア実家」の発想による一時預かり所「いいんだよHOME」。煩雑な手続きは不要で、当日対応も可能とか。代表の須山智子さんにお話を伺いました。


地域密着型の多世代コミュニティスペース・産前産後ケア施設「あゆむ庵」オープン!多世代が集う”まちの保健室”目指す

地域密着型の多世代コミュニティスペース・産前産後ケア施設「あゆむ庵」オープン!多世代が集う”まちの保健室”目指す

2024年5月に多世代コミュニティスペース「あゆむ庵」が中原区にオープンしました。この記事では、地域密着型の施設「あゆむ庵」の概要とその特長についてご紹介します。


最新の投稿


「学生による子ども・子育て支援事業ボランティア体験」で将来に役立てよう!

「学生による子ども・子育て支援事業ボランティア体験」で将来に役立てよう!

「学生による子ども・子育て支援事業ボランティア体験」は、川崎市内の地域子育て支援センターや保育園での実践的な体験を通じて、子どもたちや子育て中の保護者との関わりを深めることができます。この記事では、ボランティア体験の内容や参加条件、申し込み方法についてご紹介します。


多拠点コミュニティ「ADDress」という新しい暮らし方

多拠点コミュニティ「ADDress」という新しい暮らし方

多拠点コミュニティを提唱するADDress。その武蔵新城A邸の家守を務めるのが横田寛さん(写真・左)と広武真季さん(写真・右)。家守というのは、いわば管理人ですが、ごはん会などを催して地域との交流も盛んだとか。利用目的は様々ですが、ADDressならではの絶妙な距離感が魅力だそうです。


「”CO”育て世代のウェルビーイング夫婦講座」の受講生を募集中!

「”CO”育て世代のウェルビーイング夫婦講座」の受講生を募集中!

川崎市教育委員会は、夫婦が協力して家事や育児に取り組むためのスキルを学び、家族みんなが笑顔になることを目指して「”CO”育て世代のウェルビーイング夫婦講座」を主催しています。全5回の連続講座で、各回ごとに異なるテーマで実施されます。この記事では、講座の詳細や参加方法についてご紹介します。


学力とメンタル両方を強化する「コーチング学習」を提唱する今西竜一さん

学力とメンタル両方を強化する「コーチング学習」を提唱する今西竜一さん

防衛大学校に進み自衛隊のトップを目指するも怪我で断念。一般企業に入社したのち、指導者を輩出する教育家を目指して退社。学力とメンタル両方を強化する「コーチング学習」を編み出して、個別指導塾コーチONEの塾長として、子どもたちを指導する今西さんにお話を伺いました。


中原区のお子さま向けアレルギー相談を専門医が無料で実施!

中原区のお子さま向けアレルギー相談を専門医が無料で実施!

中原区役所では、専門医による無料のアレルギー相談を実施しています。お子さまのアレルギーに関する不安を解消するため、専門医が相談に応じ、保健師・看護師・栄養士が生活の工夫についてアドバイスします。この記事では、アレルギー相談の実施期間や予約方法についてご紹介します。


区民ライター募集