■小中学校ではあまり出来のいい生徒ではなかった
―小学5年生の時に入塾テストに落ちたそうですね
今西:そうなんです。かなり衝撃を受けました。僕は小学校では、それほど勉強ができないというわけではなかったのですが、塾に落ちるほど学力がないのかと、劣等感を味わい、姉に馬鹿にされても言い返せないことがショックでした。
―中学校では、問題ありの生徒と見られていたとか
今西:定期試験などの勉強の仕方がよくわからなかったんです。ですから、点数があまりよくない上に、反抗期でもあって、学校に遅刻するとか、制服の規則も守らなかったりしたので、先生からは問題児扱いされました。
ただ、中学校2年生の時に勉強のコツをつかんだのです。塾のテストで数学の図形の証明問題があって、物事には根拠がいるということに初めて気づき、そこで勉強をするコツをつかみました。
―高校卒業後、防衛大学校に進学されましたね
今西:防衛大学校には行くつもりは全くなかったのですが、高校3年生の9月に、防衛大学校の説明会が高校であって、初めて防衛大学校の内容を知ることができました。聞いてみると寮生活でおカネももらえるということで、当時、実家が関西だったのですが、関東に行きたいと思っていたので、それならば、防衛大学校に進学しようと思ったのです。
■防衛大学校に進むも一般企業に就職する
―防衛大学校に進学しても、自衛隊に入るかどうかは悩まれたとか
今西:大学に入る前に、自衛隊の方が「防衛大学校に進んでも、自衛隊に入る必要はない」と教えてくれたことと、僕の周囲の人が自衛隊に入ることに反対していたので、当たり前に自衛隊に入る環境がありませんでした。
ただ、いろんな人に進路相談をしたところ、ある一般企業の社長の方から「防衛大学校は自衛隊の中では特別な存在で、一般企業でいうならば、東大や京大のようなもの。組織のトップになるということを考えるならば、自衛隊に進むべきでは」と言われました。
そこで陸上自衛隊出身の統合幕僚長になろうと思って勉強をしました。陸上自衛隊の同期が200人くらいいたのですが、その200人のトップになるのであれば、可能性はあるなと思ったのです。
そう思って防衛学や国防について勉強する中で、「今の安全な日本があるのは当たり前ではなく、いろんな先人の決断・努力・国防の意志の結果であって、自分もそれを引き継いていかないといけない」と思いました。特に硫黄島の研修でそれを強く感じました。
防衛大学校時代の今西さん(後列、左から2人目)
―しかし、一般企業に入ることになりましたね
今西:自衛隊には戦闘職種と後方支援職種があり、僕は戦闘職種のレンジャーを目指したのですが、当時、ラグビーをしていてケガが多く、脱臼とか骨折で、次に骨折したら命にかかわると医師から言われ、戦闘職種は諦めざるを得ませんでした。
しかし、戦闘職種でなければ、統合幕僚長になれる可能性も少なくなりますし、レンジャーにもなれないんです。怪我で入退院を繰り返していたので、自衛隊に向いていないのかなと。この先30年、後方支援として自衛隊で働けるかなと考えてしまいました。それが一般企業に進んだきっかけです。
■塾ではコーチングとティーチングを組み合わせる
―会社を辞めて塾を開こうと思い立ったのはなぜですか
今西:「自分が何に向いているのか」、「影響力や熱意を発揮できる仕事は何か」、「大学で国防を学び、企業で経済について学び、今の日本に何が必要か」と考えたときに、教育ではないかと思ったのです。
高校時代、バイトで家庭教師をしていたのですが、教えるのはうまいのではないかと思っていました。そこで、これからの日本をしょって立つような指導者が出てこられるような土台となる教育をやった方がいいのではないかと思ったのです。
―今の塾ですが、メンタルを強くするコーチング学習が特徴ですね
今西:コーチングは基本的には大人向けなので、学生に合わせて3つのステップに分解しました。最初はメンタルコーチング、いわゆるカウンセリングですね。自信を持つ、自己肯定感を高めるステップです。
自己理解コーチング、ポジティブフィードバック法、リフレーミングなどいろんなアプローチがありますが最も大切なことは「存在承認」を与えることです。結果や行動など目に見えているものを認めることはしますが、見えていないもの、意識や存在に対するアプローチが日本人は弱いのです。
話を聞いてあげて、観察して、任せてあげる、「自分は価値ある存在だ」と自覚させることが存在承認のベースになります。
次に自己効力感を上げるステップですが、3つの心理状態として、コンフォートゾーン(快適ゾーン)、ラーニングゾーン(学習ゾーン)、パニックゾーン(危険ゾーン)があります。コンフォートゾーンにずっといたいというのが、基本的なモチベーションになってくるので、ここをどうやってあげていくかが重要です。
そこで、コンフォートゾーンを未来に持っていく…たとえば、オリンピック選手が4年後に金メダルを取りたいために今、大変な練習をするということがわかりやすいですね。未来に対して、コンフォートゾーンを移動させることです。
今、ユーチューブを観たいなどの欲望のままになってしまうところを、1週間後のテストでいい点を取ったときにどういう気持ちになるのか、質問を通じて身につけていく…コンフォートゾーンを長期化するためのイメージ強化をします。
3番目に他者影響力というステップで、キャリアコーチングです。大学を卒業した後にどうなりたいのかを、コーチングを通じて明確にしていきます。これは、推薦入試対策にもなります。人物評価に対してちゃんとした評価を受けられるようになるには、大学を出た後にどうしたいのかが必要になってきます。
―ティーチングはどうされていますか
今西:ティーチングも3つのステップに分解しました。まずは基本的な学校や受験の勉強です。4つに勉強を分けていて、「暗記系」「読解系」「計算系」「作文」で、まずは暗記系を定着させることです。これができれば、ほとんど学校の勉強は大丈夫です。次に受験勉強として読解・計算・作文系を定着させます。これが学習ティーチングですね。
その中で、市販の教材をこういう順番にやっていったら東大まで行けるという学習ルートがあります。あとはそれを実行するかどうかだけです。ですから、自分に自信がついたら、あとは自習に集中すればいいのです。その段階の子どもには自習のための学習計画を組み立てます。これが自習ティーチングでありコンサルティングですね。
最後に作文・表現力ティーチングとして、小論文や面接、志望理由の書き方など、推薦入試のためのコンサルティングもします。
授業は和気あいあいとしている
■「循環教育」でみんなが学べる機会を得る社会をつくる
―「循環教育」を推進されているそうですね
今西:生徒が生徒に教え合う「循環教育」では、まずは他者というものが出てきます。自分自身が取り組むべき課題と他人が取り組む課題を分離することが必要です。
1人の人間が指導を受けてスキルアップしていく先には、人を教えられるというスキルもあった方がいいと考えています。高校生が小学生に教えてあげるというのも他者性を身に着けるためにとても重要でだと思っています。
僕が理想とする教育というのは、ステップアップしていった結果、その子たちが誰かを教えるといった循環ができることです。勉強を教わりつつ、指導者としての力を鍛えるために誰かに教える…その循環さえ回っていけば、誰もが学習機会を得ることができる社会になると思っていて、そこが僕の目指すところです。
―今後の抱負をお聞かせください
今西:先生を増やしたいなと思っています。今は、1人でやっていますが、拡大していきたい。以前は認定コーチ制度がなかったので、拡大しても、僕の負担が大きくなるだけでしたが、学習ルートの会得と認定コーチ制度があれば、ほぼ自分と同じようなことができるのではないかと思います。
僕自身は推薦入試対策などに特化したいと思っています。できれば、僕ではない人でもコーチング、ティーチングができるような体制をつくり、全国的に展開し、海外にも進出したいですね。
―読者へのメッセージをお願いします
今西:コーチング学習で一番、トータルで効果があったのが、軽度の学習障害を持ったお子さんです。そういった障害を持つお子さんを持つお母さん方は、「ごく普通で、ちゃんと学校にも通えるのに、何かちょっと違う」と悩まれていらっしゃいます。
ですから、お子さんが軽度の学習障害かなと疑問を持たれた方は、ぜひ、一度、どういう進路があるのかも含めて、ご相談に来ていただければと思います。
また、コーチング学習についてもって詳しく知りたい人、一緒に働いてみたい人、チャリティ活動を支援してください方など、お気軽にご連絡いただければと思います。
現代社会は、地縁、血縁、社縁(職場の縁)が希薄になり、個々人がバラバラに分断され、多くの人が孤立するようになりました。そんな社会を修復するにはどうすればいいか。その一つの解が、新たなコミュニティを創造することだと思っています。