橘処理センター(川崎市高津区)について
橘処理センターは1974年から普通ごみ焼却処理施設として稼働。1988年に粗大ごみ処理施設を備えて、普通ごみ・粗大ごみを処理してきましたが、老朽化に伴い2017年12月から建て替え工事がおこなわれ、2024年4月1日から稼働を開始しています。
新しくなった同センターは「ごみ焼却処理施設(普通ごみ)」と「ミックスペーパー資源化処理施設」の2つの施設を備え、主に「高津区」「中原区」「宮前区」の3つの区から出るごみを処理しています。
ちなみに、橘処理センター含めて川崎市内のごみ処理場は全部で4つあります。
- 橘処理センター(高津区・1974年 竣工、2024年に建て替え完了)
- 浮島処理センター(川崎区・1995年 竣工)
- 堤根処理センター(川崎区・1979年 竣工、現在 建て替えのため停止中)
- 王禅寺処理センター(麻生区・1986年 竣工、2012年に建て替え完了)
どの処理場も30年近く経っているのが分かりますね。老朽化が進行しており持続可能なごみ処理体制を維持するため、今後も建て替えが実施される予定です。
2012年3月に建て替えが完了した「王禅寺処理センター」は敷地が広大のため、稼働を続けながら敷地内に新施設を建て替える事が可能でしたが、橘処理センターと堤根処理センターは物理的に難しいため、1施設を休止して残りの3施設で処理を進める3処理センター体制が検討され2015年から開始されています。
この3月で橘処理センターは建て替えが終わったため、次は「堤根処理センター」の建て替える予定となっているわけです。
基本的に稼働年数は約30年、建て替えに約10年かけるといった40年のサイクルで運用しています。
川崎市橘処理センター 外観写真
普通ごみはどのように処理しているの?
普通ごみの処理について大まかな流れは以下の通りです。
① 収集車がプラットフォームで、ごみピットへごみを投入
② ごみピットに溜まったごみを、クレーンで拾い上げごみホッパへ投入
③ 焼却炉でごみを燃やして灰にし、その灰を車輛に載せて搬出
それでは詳しくみていきましょう。
■① 収集車がプラットフォームで、ごみピットへごみを投入
プラットフォームの入口と出口で収集車の重さを測り積んだごみの重さを測ったり、臭いを外に出さないために出入り口にエアカーテンが設置されています。
※プラットフォーム: 収集車がごみを降ろすエリアのこと
※ごみピット: 収集したごみを一時的にためておくところ
■② ごみピットに溜まったごみを、クレーンで拾い上げごみホッパへ投入
「ごみクレーン」が一度に掴めるごみの量は14㎥で、重さにすると5.6トン。これは小学4年生160人分の重さになるようです。
※ごみホッパ: 焼却炉への投入口のこと
■③ 焼却炉でごみを燃やして灰にし、その灰を車輛に載せて搬出
焼却炉に入れられたごみは850℃以上の高い温度で燃やされます。高温にすることで、ごみの臭いを分解したりダイオキシン類の発生を防いでいます。
焼却炉の中の「火格子」は階段状になっていて前後に動くことで、ごみを撹拌して効率よく燃焼させています。このタイプの焼却炉はストーカ式と呼ばれています。
燃やされたごみは灰になり、車輛で搬出して浮島埋立処分場へ運ばれて終わり!・・・ではありません。
焼却炉の図にあるように燃やした時に出る「排ガス」はどうなるのでしょうか?
焼却炉で燃やした時に出る排ガスはどうなるの?
ごみを燃やした時に出る温度の高い排ガスは、焼却炉から「ボイラ」へ送られ、「減温塔」⇒「ろ過式集じん器」⇒「触媒脱硝設備」などを通って無害化されて煙突を通って外へ出されています。
単に、無害化した煙を煙突から出すだけではありません。
「ボイラ」の中には水が流れる水管(すいかん)と呼ばれる管が張り巡らされていて、高温の排ガスが水管の周りを通ることで、水管の中の水が熱せられ沸騰し蒸気になります。その蒸気が「蒸気タービン発電機」へ送られ、蒸気を「タービン」と呼ばれる羽車に吹き付けて発電させます。
発電させた電気エネルギーは橘処理センター内で使われる電気の全てを賄っていて、余った電力は地域エネルギー会社「川崎未来エナジー」を通じて川崎市内の小中学校など全201の公共施設へ供給されています。
また蒸気の一部を隣接する「川崎市民プラザ」へ送り、冷暖房や温水プール熱源として利用したりもしています。熱エネルギーを無駄にしないよう電力に換えて地産地消を実現し地域に貢献しているのですね。
ミックスペーパーの処理の流れは?
ミックスペーパーは、普通ごみを処理する「焼却処理施設」ではなく、同じ敷地内の「資源化処理施設」で処理されています。
そもそもミックスペーパーとは「新聞・雑誌」「段ボール」「紙パック」以外の紙で、チラシやパンフレット、ティッシュペーパーの箱といった水に溶ける紙のことです。汚れがひどい紙や臭いがついた紙、防水加工された紙は出せませんので注意しましょう。
ミックスペーパーは最終的にリサイクル工場へ運ばれ、皆さんが使うトイレットペーパーに生まれ変わるんです。
分別は手間なので、ついつい普通ごみと一緒に捨ててしまいがちですが、大事な資源なんですね。
不適物を取り除く作業を人手でやっていることに驚きますよね。何でも機械化できる訳ではないことを実感しました。
見学前には、不適物ってどんなものがあるのかなと思ってましたが、見学時に「こんなものが?なぜ?」と驚いてしまい写真を撮らせてもらいました。
時計、ハサミ、手帳、フライパンなど
炊飯器、おもちゃ、ドライヤーなど
川崎市のごみの排出量は政令指定都市の中で1,2位を争う優等生
皆さんは、ご存知でしたか?実は川崎市は、年々ごみの排出量が減少しています。2017年度に1人1日あたりのごみの排出量は834グラムで、政令指定都市の中で初めて1位になりました。続く2018年度は816グラム、2019年度は804グラムと3年連続で1位となっています。
直近の2021年度と2022年度は、791グラムと767グラムで両年度とも政令指定都市の中で2位という結果ですが、上位常連の都市なんですね。
年々人口が増えている川崎市のごみの排出量が減っているということは、「ごみの分別をキッチリしている」「食品を残さない」「マイバッグやマイボトルを利用する」といった市民の皆さまや事業者の方々で取り組んだ努力の賜物なんですね。
■これからも引き続き「ごみの分別」に取り組みましょう。
ごみをきちんと分別することは排出量削減に繋がるだけではありません。普通ごみや資源ごみに瓶や電池など不適物が入っていると焼却炉や破袋機などの機械が壊れることがあるそうです。また資源ごみの不適物は人の手によって取り除いていることを説明しましたが、刃物など入っていたら怪我をさせる恐れがありますので気をつけましょう。
また、灰を埋立処分している浮島埋立処分場は、あと35年でいっぱいになると試算しています。できる限り延命化するためにもごみの量を減らす取り組みが大事なんですね。
川崎市は『ごみ分別アプリ』を無料で配信していますので、分別が分からない時や迷った時はこのアプリを使って調べてみてください。
なお、今年度(令和6年4月)から川崎区で「プラスチック資源」の収集が始まっています。これは今まで違う袋で出していた「プラスチック製品」と「プラスチック製容器包装」を一緒に収集する取り組みです。
「プラスチック製品」は、タッパーやコンビニでもらうスプーンやストローのことで、「プラスチック製容器包装」は、そのストローやスプーンが入っている袋だったり、カップ麺の容器などのことです。
今までは「プラスチック製品」は、普通ごみで出すことになっていましたが、1つの袋でまとめて出せるようになります。
まずは川崎区からスタートし、令和7年度は幸区と中原区、令和8年からそれ以外の区で収集する予定となっています。
詳しくは、川崎市のHPで紹介されていますので、よければご確認ください。
これまで橘処理センターでの一連の処理を説明してきましたが、ほとんどの工程が機械で処理しているため、職員の方々が「中央制御室」にて24時間体制で監視しています。
私たちが生活していく中で日々出るごみは住まいのごみ捨て場に置くだけで終わりではなく、そこから収集車で収集してくれる職員の方々や処理施設で働いてくださっている職員の方々がいてくれるからこそ成り立っていることを改めて感じます。
政令指定都市の中でごみの排出量1位に返り咲けるよう、これからも引き続き市民の皆さんで協力しながらごみの分別をしっかりしていきましょう!
橘処理センター内を案内して頂いた羽入貴男さん(左)と吉垣達也さん(右)
~見学を終えて~
人生の中でごみ処理場を見学したことがなかったので楽しい見学でしたし、小学校時代に学校内の「焼却炉」へごみでも何でも入れていた時代を思い出し懐かしく感じました。
さすがに今の時代、学校内に「焼却炉」はないそうです(笑)
施設内をご案内頂きました羽入さんと吉垣さんには、とても親切・丁寧にご対応いただきましたこと感謝申し上げます。
本当にありがとうございました。
◆施設概要
- 施設名称: 川崎市橘処理センター・川崎市橘処理センター発電所
- 所在地: 神奈川県川崎市高津区新作1丁目20番1号
- 敷地面積: 24,488.63㎡
- 建築面積: 13,902.71㎡
- 延床面積: 31,918.44㎡
- 煙突の高さ: 100m
- 着工: 2017年12月19日
- 竣工: 2024年3月29日